|| 知ってるけど実はよく分からんやつ
「具体的には分からん」けど「なんでも入れていい」もの
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学生さんなんかはわりと見かけると思いますが、どうでしょう?
よく考えると、こいつの意味ってよく分からんと思います。
変数は、まあ変数ですよね。
なんかいろんな値をとるなんか、ですよね。分かります。
でもなんか、これだけじゃ説明不足な気がしませんか?
ふわふわしてるというか、曖昧というか。
はい。
とまあそういう感じだと思いますので、
この記事では厳密な意味について扱っていきます。
目次
・個体変数・変項「変数(範囲内のどれかの値をとる)全般のこと」
自由変数・変項「値が定まっていない個体」
束縛変数・変項「値が定まっている個体」
・変数と変項の違い「実は特にない(みんな好き勝手使ってる)」
変数の定義に関しては
『量化子』などの「真偽を確定させる演算子」
とかを知っていると理解しやすいです。
以下、3つの用語について説明するわけですが、
これらの区別には「束縛子」が深く関わってますので。
個体変数 Individual Variable
|| 範囲内のどれか一つを取り得るやつ
「変数」の『全般・総称』のことを、
「個体」とか「個体変数」なんて呼ぶことがあります。
「変数」の中には
「自由変数」「束縛変数」なんて区分があるんですが、
これらを区別しないとき、
これを総称する「個体変数」という概念が必要で、
証明に関する厳密な話では、
こいつがちょくちょく出てきたりします
この説明から分かる通り、
多くの人が思う「変数」はこれのことです。
その中身が「自由変数」「束縛変数」になります。
一階述語論理では
「個体の量化のみを許す」みたいな記述があるんですが、
\begin{array}{llllll} \displaystyle \forall x &A(x) \\ \\ \exists x&A(x) \end{array}
ここで使われている「個体」の意味はこれ。
初見じゃほんと、これの意味は分かんないと思います。
具体例
↓みたいな論理式があるとします。
\begin{array}{llllllll} f(x) \\ \\ g(x,y) \\ \\ P(x) \\ \\ ∀x\,A(x) \end{array}
この場合「個体変数(個体)」は
「 x 」「 y 」のことを指してます。
中高でよく使ってたやつですね。
特に疑問は湧かないと思います。
自由変数 Free Variable
|| 自由に値を取れる感じの変数
「束縛(量化)」されてない「個体変数」のこと。
「実際に値を入れてみる」まで、
「真なのか偽なのか分からない」
というのがこれの持ってる性質で、
次に紹介する「束縛変数」と比較すると、
『値の中身が何も限定されていない』
という点で明確に異なります。
証明と自由変数
「証明」をする上で生じる「自由変数」は
『命題の真偽を曖昧に』します。
そのため「証明」を行う上では、
この「自由変数」は真っ先に排除されなければなりません。
とはいえ、それだけ言われてもって話ですよね。
どうやって取り除くか、よくわからないと思います。
というわけでその「取り除き方」なんですが、
実は知ってしまえば非常に単純な話で、
\begin{array}{llllll} \displaystyle x&←&\mathrm{Value} \end{array}
まあこんな具合に、
「具体的な値をぶち込んでしまう」だけ。
特に小難しいことが必要なわけではありません。
\begin{array}{lllllllll} \displaystyle \mathrm{Thing} &←&\mathrm{book} \end{array}
日常でもよく見られる手順です。
直観的に理解できると思われます。
具体例
例えば以下のような式では
\begin{array}{llllllll} P_1(x)&∨&∀x\,P_2(x)&∧&∀y\,P_3(x,y) \end{array}
「命題 P_{1}(x) と ∀y\,P_3(x,y) 」の2つでは
「 x 」はなんの制限も受けていません。
こういう状態を指して
「自由な x の現れ」
なんて表現することもあって、
この時、この「 自由に表れている(occur free)個体 x 」が
「自由変数」なんて呼ばれたりします。
「証明」ではまずこれを発見
その後に「具体的な値を入れる」ことで「定数」にして
全ての命題の「真偽を確定」させます。
開論理式 Open Formula
|| 外に開けてる感じの論理式
「自由変数」を含む「論理式」のこと。
以下に紹介する
「閉論理式」ではない「式」という認識でOK。
核は「自由変数の有無」なので、
そこだけ押さえておきましょう。
束縛変数 Bound Variable
|| 束縛されてるっていうワードセンス
「束縛(量化)されている個体変数」のこと。
まあ要は「真偽に関与しない」変数のことで、
『中身の範囲がある程度決まって』います。
比較すると、
「自由変数」が『どんな値をとるか分からない』のに対して、
「束縛変数」は『ある程度の範囲は分かっている』状態
つまり『真偽に関与するかさえ分からない』状態ではなく、
「束縛変数」は『真偽を確定させることが可能』です。
具体例
「量化子」が『断言・宣言である』
ということを押さえた上での話になりますが、
\begin{array}{llllllllll} \displaystyle ∀x&[x=x] \\ \\ ∃x&[x^2=1] \end{array}
上のはどっちも「成立する」「存在する」
という『断言』なので「真」
つまりここでみられる「個体 x 」は、
『条件を満たす x 』であるため、
結果として、
『どのような値をとったとしても』真偽に関与しません。
なのでこの場合、 x は「束縛変数」となります。
閉論理式 Closed Formula
|| 外を見ないで内側に閉じこもってる論理式
「自由変数」を含まない「論理式」のこと。
「項」の場合は「閉項」なんて言ったりもします。
『真偽が確定している状態』なので、
基本、これが「結論・帰結」になります。
束縛子
|| 束縛してくるやつ
「真偽を確定させる」「演算子」のこと。
代表的かつ基本的なものは「量化子 ∀,∃ 」
当然他にもありますが、
束縛子っていうとだいたい『量化子』を指しますね。
総和(あれもこれも全部足す)
\displaystyle\sum_{x∈S} …
x だけは下限と上限が束縛されています
総乗(あれもこれも全部掛ける)
\displaystyle\prod_{x∈S} …
ここでも x だけは下限と上限が束縛されています
極限(どこまでもそこに近づける)
\displaystyle\lim_{x \to \infty} …
これも x だけは束縛します
積分(線みたいな長方形を全部足し合わせる)
\displaystyle\int_a^b … dx
これも x だけ束縛
余談
「変数と変項の違い」に関してですが、
すみません。正直よく分かりませんでした。
「数字」が中身なら変数で、
「それ以外のも含む」なら変項かな?
と、最初はそんな風に考えていたんですが、
どうやらそういうわけでもないようで、
「数字だけ」の範囲の話でも「変項」って言葉は使われているし、
「数字以外も含む」範囲でも「変数」という言葉は使われています。
数の意味
「変数」と「変項」の明確な違いについて
おそらく、正確には定義されていないのが現状だと思われます。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle \mathrm{Constant}&∈&\mathrm{Term} \\ \\ \mathrm{Variable}&∈&\mathrm{Term} \\ \\ && \mathrm{Term}&∈&\mathrm{Number} \end{array}
「数」の定義からして十人十色なのが現代です。
「数」と「項」の厳密な定義が浸透してるはずはないわけで、
結果として、これは好きに使われている、と。
おそらくはそんな感じだと思われます。
数の定義
厳密には「数字」は『あるブロックのラベル』
そのいずれかを表す「個体 x 」が「変数」で、
\begin{array}{lllllll} \displaystyle 0&=&\{\} \\ \\ 1&=&\Bigl\{ \{\},\{\{\}\} \Bigr\} \\ \\ 2&=& \Bigl\{ \{\},\{\{\}\},\{\{\{\}\}\}, \Bigl\{ \{\},\{\{\}\} \Bigr\} \Bigr\} \\ \\ &\vdots \end{array}
自然数の場合なら、
例えばこんな感じに定義されてるんですけど、
これ、別に「数字でなければならない」理由はなくて、
そのラベルを「文字」にしても特に問題はありません。
数の意味と数字
とまあこんな感じで、
「数」はそもそも「数字だけ」を指していない概念なので、
「項」との区別が非常に難しい。
その点で、
「変数」と「変項」の意味はあまり変わらず、
どちらかといえば、範囲が広いのは「変数」の方で、
結果として、どちらを使っても意味があまり変わらない。
だから、どっちかを好きに使っている、と。
まあ、内情としてはこんな感じだと思われます。
結論、どっちでもOK
専門用語大好きマンだと「変項」を使うイメージで、
区別めんどくさいマンだと「変数」を使うイメージ
好きな方を使ってOKです。
(ちなみに自分はめんどくさいマン)
ちなみに英語ならどちらも「Variable」
「変数」「変項」のような2つの概念は存在しません。
自由変数の厳密な定義
「自由変数」の振る舞いについての宣言。
その「最低限の要件」が変数の定義になります。
というわけで定義の準備
「原子論理式」を「 φ,ψ 」とし
「変数(個体)」を「 x,y 」とします。
使われる記号について
「記号 \mathrm{fr}(φ) 」を、
「文 φ 」の中の「変数(個体)x 」の『集合』とします。
\begin{array}{llllll} \displaystyle φ(x) \\ \\ \mathrm{fr}(φ) &=&\{x\} \\ \\ \\ \displaystyle φ(x,y) \\ \\ \mathrm{fr}(φ) &=&\{x,y\} \end{array}
以下「変数(個体)」の振る舞いについて
命題記号では束縛されない
意訳すると「わかんない」から「変わらない」
みたいなことを言っています。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{fr}((¬φ))&=& \mathrm{fr}(φ) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{fr}(φ)∪ \mathrm{fr}(ψ)&=& \mathrm{fr}(φ∧ψ) \\ \\ &=& \mathrm{fr}(φ∨ψ) \\ \\ &=& \mathrm{fr}(φ→ψ) \\ \\ &=&\mathrm{fr}(φ↔ψ) \end{array}
『自由変数の集まり』
これはどれも『束縛されてない』から変わらん
この式の主張はそんな感じです。
量化記号では束縛される
「量化記号」による『束縛』の話
\begin{array}{llllllll} \displaystyle \mathrm{fr}(φ)-\{x\}&=& \mathrm{fr}(∀x \, φ) \\ \\ &=& \mathrm{fr}(∃x \, φ) \end{array}
「変数(個体)」が「束縛されている」
これがどういうことか形式化するとこんな感じ。
『述語論理の文脈』において
「束縛」を行うのは「量化子」のみ。
結果、自由変数の中身が変わる、と。
まあそんなことを言っています。
余談になりますが
『 \mathrm{fr}(φ)=∅ (自由変数無し)』の時
『主張 φ 』は「閉論理式・文」と呼ばれます。