|| 無限に続く数列が有界ならその一部は収束する
いろんな話の基礎になっている存在定理
平均値の定理とかの実数関連の証明で使われます。
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目次
Weierstrass の公理「上限の存在を保証する宣言」
有界単調数列の収束「分かりやすい収束する条件」
コーシー列「必ず収束する数列のこと」
アルキメデスの原理「自然数は上に有界ではない」
はさみうちの原理「左右の極限値が同じなら真ん中も同じ」
区間縮小法「区間の部分集合をとっていくと1点に収束」
証明「部分列が収束することを示す」
Bolzano-Weierstrass の定理
|| 収束するかどうかの条件についての基礎
数列 \{a_n\}⊂R が「有界」である時
この \{a_n\} は「収束する部分列」を持つ
\begin{array}{rrrrrrrrrr} \displaystyle 1&-1&1&-1&1&-1&1&\cdots&&→&&× \\ \\ 1&&1&&1&&1&\cdots&&→&&1 \end{array}
これがこの定理の主張なんですが
これはこれだけ見てもよく分かんないと思います。
部分列
数列 \{a_n\} の一部 \{a_{n_k}\} の中でも
『順番を変えていない』もののこと。
\begin{array}{llllll} \{a_n\}&&&\displaystyle a_0&a_1&a_2&a_3&a_4&a_5&\cdots \\ \\ \{a_{n_k}\}&&& &a_1&&a_3&&a_5&\cdots \end{array}
条件は付きますが字面通りです。
他にも「一部(無限個)」だったり
そういった制約があるので念のため補足。
ちなみに厳密には
『順序を保つ単射 H 』で定義されていて
\begin{array}{llllll} \displaystyle H&:&N&\to&N \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle n<m&⇒&H(n)<H(m) \end{array}
ナンバリング n をこの H(n) にとっ替える
この時の \{ a_{H(n)} \} が部分列になります。
定理が果たす役割
これは「収束するやつの存在」を保証していて
例えば数列 \{ a_n \} がこの定理の条件を満たす時
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n&=&α\end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle N<n &⇒&|a_n-α| <ε \\ \\ \displaystyle N<H(n) &⇒&|a_n-α| <ε \end{array}
「収束する部分列 \{ a_n \} を作れる」
とかまあそんな感じのことが言えるので
例えば『収束することを保証したい』場合
\begin{array}{llllll} \displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{n}&=&? \\ \\ \displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{H(n)}&=&α \end{array}
その数列が「収束する」か分からない時などで
「収束すると断言できる数列」を
これは提供できたりします。
実際 \{a_n\} が収束するか分からないパターンは多く
それでいて「有界」の条件を満たす場合は多いので
そういった事例でこれは役に立ちます。
Weierstrass の公理
|| 順序集合と部分集合と上界から導かれるもの
「順序体」の「空ではない部分集合 A 」
\begin{array}{llllll} \displaystyle \sup A \end{array}
まあつまりは『上限が存在する』ってことの宣言で
これにより「上限」という概念は扱えるようになります。
(定義以外から構成不可なため存在の宣言が必要)
順序体
「四則演算」ができる「全順序集合」のこと
\begin{array}{llllll} \displaystyle +&- \\ \\ ×&÷ \end{array}
四則演算ってのはまあこれ。
特に疑問は無いと思います。
ただ、順序集合は耳慣れない単語でしょう。
といってもそう難しくはなくて
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&≤&1&≤&2&≤&3&≤&\cdots \end{array}
これは単に『順序が分かるように作られた』
そういった「集合 (N,≤) 」でしかありません。
よく見てみるとそんな難しくないと思います。
有界単調数列の収束
|| 上界と上限の定義から導かれる当然の結果
「収束する」のほぼ原形と言える事実
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n &=&\sup \{a_n\} \end{array}
「上に有界」な『単調増加数列 \{ a_n \} 』
これは「収束」し、その収束値は「上限」と一致する。
この事実は「収束する」っていう概念を語る上で
ほぼ最低条件のような役割を果たします。
ちなみに「単調増加数列」っていうのは
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_0&≤&a_1&≤&a_2&≤&\cdots \end{array}
見たままこんな感じの
「大きくなり続ける」やつです。
証明というか確認
「上限 α 」としておきます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n&=&α \end{array}
これを示すとなると
あまりにも基礎的なため
「定義」から逆算する以外に方法はありません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|&<&ε \end{array}
というわけでこれを求めていくわけですが
材料はほぼ出揃っています。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_n&≤&α \end{array}
まず「上限」の定義からこれは明らか。
\begin{array}{llllll} \displaystyle α-ε&<&a_k \end{array}
また「上限の定義」と「任意の定数 ε>0 」から
このような「 a_k 」の存在も導けます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_k&≤&a_n \end{array}
また「任意の定数 ε>0 」である事実を利用し
このように大小関係を調整
\begin{array}{llllll} \displaystyle α-ε&<&a_k&≤&a_n&≤&α&<&α+ε \end{array}
以上から、このような関係が導けて
\begin{array}{lllllllllll} \displaystyle α-ε&<&a_n&&⇒&&-ε&<&a_n-α \\ \\ a_n&<&α+ε &&⇒&&a_n-α&<&ε\end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|&<&ε \end{array}
これを変形していくと極限の定義が得られます。
コーシー列
|| 収束する最低条件を満たす数列
「1つの数に寄っていく」を遠回しに意味する。
\begin{array}{llllll} \displaystyle N≤n,m &&⇒&&|a_n-a_m|<ε \\ \\ n,m \to \infty &&⇒&&\displaystyle |a_n-a_m| \to 0 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n,m\to \infty}|a_n-a_m|&=&0 \end{array}
条件は以上の通り。
これを満たすような数列 \{a_n\} を
「コーシー列・基本列」と言います。
収束するやつは基本列
「収束する」ということは
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n&=&α \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|&<&ε \end{array}
「極限値 α が存在する」ということ。
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-a_m|&<&ε_{h} &&&? \end{array}
ここから「基本列」を導けば
「収束する」→「基本列である」と言えるので
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-a_m|&=&|a_n-α+α-a_m| \\ \\ &=& \left| a_n-α-(a_m-α) \right| \end{array}
「 ε より小さい」と分かる形と
「三角不等式」の存在から
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left|a_n-α+α-a_m \right|&≤&\left| a_n-α \right|+\left| α-a_m \right| \\ \\ &=&\left| a_n-α \right|+\left| a_m-α \right| \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left| a_n-α \right|&<&ε_n \\ \\ \displaystyle \left| a_m-α \right|&<&ε_m \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle \left|a_n-α+α-a_m \right|&≤&\left| a_n-α \right|+\left| a_m-α \right| &<&ε_n+ε_m \end{array}
このような関係が導けて
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle |a_n-a_m|&<&ε_n+ε_m \\ \\ &=&ε \end{array}
結果として
\{a_n\} は「収束する」という前提から
\{a_n\} は「基本列である」を導けることから
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|<ε &&⇒&&\displaystyle |a_n-a_m|<ε \end{array}
「収束する」ということは
「基本列である」と言える、と
まあこんな感じでこれは簡単に示せます。
基本列は収束する
実は ↑ の逆であるこれが成立し
「基本列である」と「収束する」
これが同値だと分かるんですけど
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|<ε &&⇐&&\displaystyle |a_n-a_m|<ε \end{array}
こちらの方の証明には
『極限値を取り出す』という工程で
「Bolzano-Weierstrass の定理」が必要になります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle |a_n-a_m|&<&ε \end{array}
この時点では「極限値の存在」は不明なので。
有界なら収束する部分列が存在する
「基本列だ」→「有界だ」の証明については
ちょっと長くなるので別記事で扱います。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle a_m-ε&<&a_n&<&a_m+ε\end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle N&≤&n,m \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle M&=&\max\{a_0,a_1,a_2,\cdots,a_{N},a_{N+1}+ε\} \\ \\ K&=&\min\{a_0,a_1,a_2,\cdots,a_{N},a_{N+1}-ε\} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle n,m&&→&&N \\ \\ &&→&&m&&→&&m=N+1 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle &&a_{N+1}+ε&=&a_m+ε&≤&M \\ \\ K&≤&a_{N+1}-ε&=&a_m-ε \end{array}
簡単にはこんな感じなんですが
ともかく「有界である」ということは
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{H(n)\to \infty}a_{H(n)}&=&α \end{array}
「Bolzano-Weierstrass の定理」より
『収束する部分列が存在する』と言えて
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-a_m|&=&|a_n-a_{H(n)}|&<&ε_c \\ \\ &&|a_{H(n)}-α|&<&ε_w \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_n-α|&≤&|a_n-a_{H(n)}|+|a_{H(n)}-α|&& \\ \\ &&|a_n-a_{H(n)}|+|a_{H(n)}-α|&<&ε_c+ε_w \end{array}
後は「三角不等式」を使えば
「基本列の定義」「部分列の収束」から
「収束する」ことを導くことができる。
とまあこんな感じで
「基本列である」→「収束する」は導けます。
アルキメデスの原理
|| 自然数が上に有界ではないっていう主張
n\to\infty の操作が行える根拠
\begin{array}{llllll} \displaystyle a>0,b>0 &⇒&na>b \end{array}
つまり ↑ のような n が必ず存在するって話で
これがあるから「 n\to\infty 」の操作は許されています。
証明して確認しておく
直感的に考えても無限に発散するのは明らか
\begin{array}{llllll} \displaystyle n&<&n+1 \end{array}
「後者 n+1 」も作れるので
まあどう考えても自然数 N は「有界ではない」です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n \end{array}
ただやはり無限を使いたいなら
この「有界ではない」の確認は必須
\begin{array}{llllll} \displaystyle a>0,b>0 &⇒&na>b \end{array}
というわけで確認するために
任意の実数 a,b>0 を考えて
「~ではない」ことを示すために
「背理法」を採用してみます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a>0,b>0&&n∈N \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle na&<&b \end{array}
というわけで「有界である」と仮定するために
「どの na よりも大きい定数 b の存在」を仮定
\begin{array}{llllll} \displaystyle na&≤&s \end{array}
すると b は「上界」の存在を保証するので
「上に有界である」ことから『上限 s の存在』が確定
\begin{array}{llllll} \displaystyle s-a&<& &&s \\ \\ s-a&<&na &≤&s \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle 100-1.5&<& &&100 \\ \\ 100-1.5&<&66 \times 1.5 &≤&100 \end{array}
そして「上限の定義」から
確実に「上界に含まれない」
このような s-a がとれるのも確実
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle s&<&na+a&=&(n+1)a \end{array}
しかしこれはこのような
「 s より大きい (n+1)a の存在」を導くので
\begin{array}{llllll} \displaystyle && (n+1)a&≤&s &&× \\ \\ s&<&(n+1)a && &&〇 \end{array}
仮定の元に存在する上限のはずの数値 s は
「上限の定義」に反することになります。
結果、「仮定」から矛盾が生じたので
これで「 na は有界ではない」が示された。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 100-1&<& &&100 \\ \\ 100-1&<&100 \times 1 &≤&100 \end{array}
とまあこんな要領でこの原理の正しさは証明され
あらゆる na で適用することが可能となっています。
(もちろんただの n でも)
はさみうちの原理
|| はさんで極限値を求める方法
大小関係を利用して極限値を求める方法。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_n&≤&c_n&≤&b_n \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left( \begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_n&=&α \\ \\ \displaystyle \lim_{n\to\infty}b_n&=&α \end{array} \right)&&⇒&&\displaystyle \lim_{n\to\infty}c_n&=&α \end{array}
すごく分かりやすい話です。
見た目通り、当然これはこうなります。
証明
これの証明はすごく単純です。
\begin{array}{llllllllll} \displaystyle &&a_n&≤&c_n&≤&b_n \\ \\ &&a_n-α&≤&c_n-α&≤&b_n-α \\ \\ -ε&<&a_n-α&≤&c_n-α&≤&b_n-α&<&ε \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |c_n-α|&<&ε \end{array}
大小比較をとるだけ。
これですぐに示せます。
区間縮小法
|| 有界な閉区間と単調減少の性質
以下のような「閉区間 I_n 」の存在から
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_n&=&[a_n,b_n] \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_0&⊃&I_1&⊃&I_2&⊃&I_3&\cdots \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n∈N}I_n&=&\{α\} & \Bigl( ≠&\emptyset \Bigr) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty} (b_n-a_n)&=&0 \end{array}
「極限値 α の存在」をこれは導きます。
イメージはこんな感じ。
これの数式的な根拠が区間縮小法になります。
証明
前提の確認からしておきます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_n&=&[a_n,b_n] \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_0&⊃&I_1&⊃&I_2&⊃&I_3&\cdots \end{array}
I_n は「有界な閉区間」であり、上の関係を満たす。
以上が前提で、ここからいろいろ導きます。
\begin{array}{llllll} a_0&<&\cdots&<&a_n \\ \\ \displaystyle &&&& a_n&<&b_n \\ \\ &&&&&&b_n&<&\cdots&<&b_0 \end{array}
まず事実確認から。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_0&<&a_1&<&a_2&<&\cdots&<&a_n&<&\cdots \\ \\ b_0&>&b_1&>&b_2&>&\cdots&>&b_n&>&\cdots \end{array}
「数列として考えてみる」ことで
『 a_n は単調増加数列である』ことと
『 b_n は単調減少数列である』ことを導きます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_n&<&b_n \end{array}
そしてこの数列は「有界」ですから
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_n &=&\sup \{a_n\} \\ \\ \displaystyle \lim_{n\to\infty} b_n &=&\inf \{b_n\} \end{array}
「極限値を持つ」ことも確定(詳細は上記)
\begin{array}{llllll} \displaystyle \sup \{a_n\} &=&α \\ \\ \inf \{b_n\}&=&β \end{array}
\begin{array}{llllll} I_{\infty}&⊃&\displaystyle \left[ α,β \right] \end{array}
以上の事実から
「 n がなんであっても内側にある」
「一番小さな区間 \left[ α,β \right] 」が導かれます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n∈N}I_n&=&[α,β] & \Bigl( ≠&\emptyset \Bigr) \end{array}
ということはこれも確定。
1つの値に収束する
まずは事実確認から。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n∈N}I_n&=&[α,β] & \Bigl( ≠&\emptyset \Bigr) \end{array}
ここで「 n の値で決まる」
「 α と β の間にある値 c 」を考えてみます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_n&<&c&<&b_n \end{array}
ここで「 c と極限値 α の差」をとるように
大小関係を整理していくと
\begin{array}{lllllllllllll} \displaystyle a_n&≤&α&≤&c&≤&β&<&b_n \\ \\ a_n-α&≤&0&≤&c-α&≤&β-α \end{array}
\begin{array}{llllllllllllll} \displaystyle 0&≤&c-α&≤&β-α&≤&b_n-α&≤&b_n-a_n \\ \\ 0&≤&c-α&&&&&≤&b_n-a_n \end{array}
このような関係が導かれて
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&≤&c-α&≤&b_n-a_n \end{array}
この時の b_n-a_n は
「 n を調整すればいくらでも小さくできる」
つまり「任意の値 ε>0 」の役割を果たすので
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&≤&c-α&≤&b_n-a_n&<&ε \\ \\ 0&≤&c-α&&&<&ε \\ \\ &&|c-α|&&&<&ε \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n∈N}I_n&=&\{α\} & \Bigl( ≠&\emptyset \Bigr) \end{array}
c が収束する値が α になることが分かります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}\Bigl( b_n-a_n \Bigr)&=&β-α \\ \\ &=&0 \end{array}
同様に b_n-a_n の極限値は 0 であることから
収束する値が α=β となり一致することが分かります。
証明
「Bolzano-Weierstrass の定理」は
上で紹介した事実から導かれます。
この定理の主張を確認しておくと
「収束する部分列が存在する」こと。
その条件が「数列 \{a_n\} 」が「有界である」こと。
大まかにはこんな感じなので
「部分列が存在する」ことと
「その部分列が収束する」こと
この2つを
「無限列 \{a_n\} が有界である」から導ければ
この定理は証明されたことになります。
前提
「実数の部分集合」として定義される数列 \{a_n\}
これが「無限列」であり「有界である」とします。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \{a_{H(n)}\}&⊂&\{a_n\} \end{array}
ついでに「部分列を表す記号 \{a_{H(n)}\} 」も
このような形で定義しておきます。
目標
「部分列が存在する」こと
「部分列が収束する」こと
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_{H(n)}-α|&<&ε \end{array}
この2点を示すことが目標です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle m&<&a_n&<&M \end{array}
使えるのは
「 \{a_n\} が無限列である」ことと
「有界である」ということだけ。
部分列の存在
明確な2つの目標の内
「部分列の存在」は簡単に示せそうです。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \{a_{2n}\}&⊂&\{a_n\} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle a_0&a_1&a_2&a_3&a_4&\cdots \\ \\ a_0&&a_2&&a_4&\cdots \end{array}
なのでここから手を付けて行きたいところですが
「 k 番目の要素 a_k を抜き取る」だけで
\begin{array}{llllll} \displaystyle \{a_n\}\setminus\{a_k\}&⊂&\{a_n\} \end{array}
「部分列の存在」自体は
あまりにも簡単に導けてしまいます。
これは特に疑う余地がありません。
部分列が収束する
「部分列の存在」は明らか。
となると残る目標はこれだけですが
まあこれも a_n が有界なため直感的には明らかな話です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle m&<&a_n&<&M \end{array}
「有界である」なら「上限」「下限」が存在する。
これが事実として分かっていますし
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty}a_{H(n)}&=&α &&△ \end{array}
この定理は
『全ての部分列が収束する』とは言っていません。
\begin{array}{llllll} ∃H(n)&\displaystyle |a_{H(n)}-α|&<&ε \end{array}
あくまで
『収束する部分列が存在する』
ということを主張しているだけなので
「全ての部分列が収束する」必要はありません。
つまり『収束する部分列が1つでもあれば良い』ので
そのような「収束する部分列の生成」が行えれば
この定理は示されたことになります。
収束する部分列の生成
「有界である」という事実から
「下限」「上限」の存在が分かるため
この方法自体は無数に考えられます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_n&=&[s_n,t_n] \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_0&⊃&I_1&⊃&I_2&⊃&I_3&\cdots \\ \\ \displaystyle I_0&⊂&I_1&⊂&I_2&⊂&I_3&\cdots \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |I_n-I_m|&<&ε \end{array}
とはいえ全て扱う必要は無いので
ここでは簡単なパターンを採用して考えてみます。
目標は「部分列が収束する」
\begin{array}{llllll} \displaystyle m_0&≤&a_n&≤&M_0 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_0&=&[m_0,M_0] \end{array}
つまりは「極限値を持つ部分列がある」
ということを示したいわけですから
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_0&⊃&I_1&⊃&I_2&⊃&I_3&\cdots \end{array}
「極限値の存在が保証されてる」「単調減少列」を
「区間縮小法」の要領で構築してみます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{10+20}{2}&=&15 \\ \\ \displaystyle \frac{10+20}{3}&=&10 \end{array}
\begin{array}{llllll} e_1&=&\displaystyle \frac{m_0+M_0}{n} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle [m_0,1e_1]&[1e_1,2e_1]&\cdots&[(n-1)e_1,M_0] \end{array}
そのために「区間」を分割してみるわけですが
この分割する数 n はなんでも良いので
\begin{array}{llllll} \displaystyle e_1&=&\displaystyle \frac{m_0+M_0}{2} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle [m_0,e_1]&[e_1,M_0] \end{array}
分けられた区間の数が最も少なくなる上に
話が簡単な 2 をここでは採用しておきます。
\begin{array}{rllllll} \displaystyle \{a_0,a_1,\cdots,a_k,\cdots\} \\ \\ \{\cdots,a_k,\cdots\} \end{array}
すると当然ではありますが、
両方あるいは片方には
必ず「 a_n が無限個」含まれます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle I_1&=& [m_0,e_1] \,\, \mathrm{or} \,\, [e_1,M_0] \\ \\ &=&[m_1,M_1] \end{array}
その「要素数が無限」の方を選び
それを I_1 として定義した上で
\begin{array}{llllll} \displaystyle [m_0,e_1] \,\, \mathrm{or} \,\, [e_1,M_0] &&→&&[m_1,M_1] \end{array}
区間の端っこになる
「下限 m_1 」と「上限 M_1 」を再定義
\begin{array}{lclllll} \displaystyle\frac{20-0}{2} &=& \displaystyle 20-10 \,\, \mathrm{or} \,\, 10-0 \\ \\ \displaystyle\frac{M_0-m_0}{2}&=&\displaystyle M_1-m_1 \\ \\ &\vdots \\ \\ \displaystyle\frac{M_n-m_n}{2}&=&\displaystyle M_{n+1}-m_{n+1} \end{array}
以下、この操作を続けるとこうなって
\begin{array}{lclllll} \displaystyle M_{n+1}-m_{n+1}&=&\displaystyle\frac{M_n-m_n}{2} \\ \\ &=&\displaystyle\frac{M_{n-1}-m_{n-1}}{2}\frac{1}{2} &=&\displaystyle\frac{M_{n-1}-m_{n-1}}{2^2} \\ \\ &\vdots \\ \\ &=&\displaystyle\frac{M_{0}-m_{0}}{2^{n+1}} \end{array}
これを整理するとこうなりますから
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lim_{n\to\infty} M_{n}-m_{n}&=&\displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{M_{0}-m_{0}}{2^{n}} \\ \\ &=&0 \end{array}
後はこの「極限値」が明らかにこうなるため
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle \lim_{n\to\infty} M_{n}&=&\displaystyle \lim_{n\to\infty} m_{n} \end{array}
こうなると言えます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle m_n&≤&a_{H(n)}&≤&M_n \end{array}
後は「はさみうちの原理」を使えば
m_n,M_n の極限値を α とおくと
\begin{array}{llllll} && \displaystyle m_n-α&≤&a_{H(n)}-α&≤&M_n-α \\ \\ -ε&<&m_n-α&≤&a_{H(n)}-α&≤&M_n-α&<&ε \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle |a_{H(n)}-α|&<&ε \end{array}
この「部分列 \{a_{H(n)}\} が収束する」
ということが示せます。
結果
「有界である」から
「収束する部分列の存在」が導かれたので
以上で証明終わり
若干ややこしいですが、
これでこの定理の正しさは示されました。