|| 天井もしくは地面みたいな
「範囲が決まってる」感覚の話。
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目次
・有界「枠があるような感じ」
上界「順序の上の方に天井がある感じ」
下界「順序の下の方に床がある感じ」
・全域的極値「その区間での端っこ」
最大値「上の方の端っこにあるもの」
最小値「下の方の端っこにあるもの」
上限「上界にあるもので一番区間に近いやつ」
下限「下界にあるもので最も区間に近いやつ」
・極値「ある区間の更に限定された場所での一番」
極大値「ある場所で更に限定された上での一番大きいの」
極小値「ある区間の限定された場所で一番小さいの」
・まとめ
これには「上下」が定まってるので
『順序集合』上の概念になります。
順序集合っていうのは
そのまま『順序』が定義された「集合」のことです。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0,1,2,3,4,5,...,n,...&∈&N \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&≤&1&≤&2&≤&3&≤&\cdots&≤&n&≤&\cdots \end{array}
「順序を定義できる集合(自然数とか実数とか)」と
「順序を定義できる関係( <,∈ など)」のセットとして
\begin{array}{llllll} \displaystyle (N,≤) \end{array}
このように表現されることが多いですね。
順序と範囲
「順序」が定義できるということは
『上下』が定義できるようになる
ということでもあります。
まあつまり『一番上』やら『一番下』やら
そういうのを「順序」は定義するわけで
結果として
『有界』やらなんやらは
この下地の基に成り立つ、と。
まあ要はそういう話で、
だから「順序集合」の話を挟んだ次第です。
厳密な定義で使用される概念なので
ここで感覚だけでも覚えておきましょう。
これから『有界』について説明していくわけですが
その説明にいくつか記号を使うので
その意味をここで確認しておきます。
『順序集合となる集合 S_{\mathrm{ord}} 』『順序関係 ≤ 』
『順序集合の部分集合 S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}} 』
『要素 e∈S_{\mathrm{ord}} 』
以上に加えて
『有界』を定義する「論理式」
その記述に量化記号を使います。
上界 Upper Bound
|| 天井の上、全部のこと
「一番上を抑えつけてるもの」のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
「上に有界である」「上から抑えられる」
なんて表現されることがあります。
これを定義する論理式の意訳は
「全部の e 以上にでっかい e_{\mathrm{bound}} があるよ」です。
一個だけじゃない点に注意しておいてください。
ともかく、こんな風な「 e_{\mathrm{bound}} の集まり」を
『部分集合 S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}} の上界』と言います。
ちなみに「区間の端っこ」以外で
「区間」と「上界」の中で一致し得る要素はありません。
下界 Lower Bound
|| 床の下、全部のこと
『上界』の「下」版のもの。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}e\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
まあ特に言うことは無いですね。
「上界」が分かればすんなり分かると思います。
補足しておくと、
この2つを満たす場合
つまり「上界」があって「下界」もある場合では
単に「有界である」と表現したりします。
この辺ちょっと混乱しますが
「有界である」とだけ言われたら
それは上も下もと思ってOKです。
知らないと どっち?ってなると思いますが
「有界である」は『上界も下界ある』となります。
全域的極値 Extremum
|| 極って字がなんかパワーある
その中(部分集合)で一番端にあるやつのこと。
『有界』は部分集合の「外側」にあるのに対して
こっちは部分集合の「内側」にあるものになります。
また、これの性質上
「一個だけ」しか存在し得ません。
最大元 Maximum
|| 一番でかいやつ
部分集合のなかで一番大きな「元(要素)」のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{max}}}∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{max}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
後で詳しく解説しますが
これは『上界の最小元(上限)』と一致する値になります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \max(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{max}} \end{array}
これはわりと使われることが多く
こういう感じに書かれることもあったりしますね。
最小元 Minimum
|| 一番小さい奴
「最も小さい要素」のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{min}}}∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{min}}≤}e \Bigr)\,\Bigr) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \min(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{min}} \end{array}
「最大値」の「小さい」版です。
以上、特に語ることはありません。
上限 Supremum
|| 中身には無い、蓋みたいなもの
『上界の最小元』のこと。
\begin{array}{llllll} &\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array} \\ \\ \displaystyle ⇒& \begin{array}{llllll} \displaystyle \textcolor{pink}{∀e_{\mathrm{bound}} }∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{up}}}} &\Bigl(\,\textcolor{hotpink}{∃e_{\mathrm{sup}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{up}}}}\,\Bigl( \textcolor{hotpink}{e_{\mathrm{sup}}}\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}} \Bigr) \Bigr) \end{array} \end{array}
開集合「 (l,r) 」があった時
その端点「 r 」のことを指します。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \sup(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&\textcolor{hotpink}{e_{\mathrm{sup}}} \end{array}
繰り返しになりますが
こいつは『上界の要素』です。
切り取った「有界な部分集合の要素」だとは
『必ず』言えるわけではありません。
これが「有界な部分集合」の要素になるのは
「閉区間」である場合や
『最大元が存在する』場合とかになります。
下限 Infimum
|| 中身じゃない、容器の底みたいな
『下界の最大元』のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle &\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}e\Bigr)\,\Bigr) \end{array} \\ \\ ⇒&\begin{array}{llllll} \textcolor{skyblue}{∀e_{\mathrm{bound}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{low}}}}&\Bigl(\displaystyle \textcolor{lightsteelblue}{∃e_{\mathrm{inf}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{low}}}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}\textcolor{lightsteelblue}{e_{\mathrm{inf}}} \Bigr) \Bigr) \end{array} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \inf(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&\textcolor{lightsteelblue}{e_{\mathrm{inf}}} \end{array}
「上限」の『下界』パターンですね。
特に言うことはありません。
極値 Extremal
|| 全域がとれたやつ
範囲に「制限」を受けた「全域極値 Extremum」のこと。
学校でやった「3次関数」とかのあれです。
『極大値』とか「最大値」とか
なんか「図形の一部分だけ」見て
『その中の最大・最小』とかを求めたことがありますよね。
これはあれの話になります。
操作はほぼ「最大・最小」と同様です。
違いは『制限』の有無だけで
他には特にありません。
極大元 Maximal
|| 制限下での最大元
そこでなら自分よりでかいやつはいねえ
みたいな、お山の大将的なやつ。
最大値との違いは
「制限」を受けてるかいないかだけ。
それ以外には特に違いはありません。
ただ、使用用途はそれなりにあって
『複雑な関数の一部を見たい』時とか
そういう場面でよく使われます。
極小元 Minimal
|| 制限下での最小元
「極大元」の説明とほぼ同じ。
「最小元」との違いは『制限』を受けているかどうかだけ。
他に言うべきことはありません。
以上、有界に関してはこんな感じです。
最後、まとめておくので参考にどうぞ。
まとめ
『部分集合 S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}} 』が『有界』であること。
これを前提にしておきます。
上に有界
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
下に有界
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}e\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
最大元
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{max}}}∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{max}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array}
最小元
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{min}}}∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{min}}≤}e \Bigr)\,\Bigr) \end{array}
上限
\begin{array}{llllll} &\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{pink}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(e\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}}\Bigr)\,\Bigr) \end{array} \\ \\ \displaystyle ⇒& \begin{array}{llllll} \displaystyle \textcolor{pink}{∀e_{\mathrm{bound}} }∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{up}}}} &\Bigl(\,\textcolor{hotpink}{∃e_{\mathrm{sup}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{up}}}}\,\Bigl( \textcolor{hotpink}{e_{\mathrm{sup}}}\textcolor{pink}{≤e_{\mathrm{bound}}} \Bigr) \Bigr) \end{array} \end{array}
下限
\begin{array}{llllll} \displaystyle &\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e∈S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}}&\Bigl(\,\textcolor{skyblue}{∃e_{\mathrm{bound}}}∈S_{\mathrm{ord}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}e\Bigr)\,\Bigr) \end{array} \\ \\ ⇒&\begin{array}{llllll} \textcolor{skyblue}{∀e_{\mathrm{bound}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{low}}}}&\Bigl(\displaystyle \textcolor{lightsteelblue}{∃e_{\mathrm{inf}}}∈\textcolor{#a869be}{S_{\mathrm{bound}^{\mathrm{low}}}}\,\Bigl(\textcolor{skyblue}{e_{\mathrm{bound}}≤}\textcolor{lightsteelblue}{e_{\mathrm{inf}}} \Bigr) \Bigr) \end{array} \end{array}
「極大元・極小元」が満たす条件の定義は
『ドメインが制限されている』点以外では
「最大元・最小元」と同じなので省略。
極大元
制限を受けた場合の最大元
極小元
制限を受けた場合の最小元
「上限・下限」は
「最大元・最小元」と一致する可能性があります。
その条件は「部分集合が最大元・最小元」を持つこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \Bigl( \max(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{max}} \Bigr)&&⇒&&\Bigl( \sup(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{max}} \Bigr) \\ \\ \Bigl( \min(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{min}} \Bigr)&&⇒&&\Bigl( \inf(S_{\mathrm{ord}_{\mathrm{pt}}})&=&e_{\mathrm{min}} \Bigr) \end{array}
なので逆は成立しませんが、
このような関係がある、ということが導けます。