|| 正しさをしっかりさせるための推論の規則
「論理式」から「論理式を得る規則」のこと。
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目次
・いろんな演繹操作
モーダス・ポーネンス「基本の演繹操作(~なら~だ)」
全称化「推論を量化するための手順(全て)」
LKの推論規則「最も有名で実用的な推論規則」
・演繹「正しい→正しいの感覚」
前件肯定「正しいなら正しいとする推論の形式」
後件肯定「違うなら違うとする推論の形式」
三段論法「ちょっと遠回しな推論の形式」
普遍汎化「一般化の話(全称化)」
存在汎化「存在するって話(存在量化)」
・論理的推論「演繹・帰納・仮説形成の3つ」
帰納「絶対に正しいわけじゃない演繹みたいな操作」
仮説形成「結果じゃなくて原因を考えるやり方」
・誤謬「推論が妥当じゃないこと・変なこと」
論点先取「とりあえず正しいってことにしちゃう間違い」
・まとめ
『推論』にはいろいろやり方があって、
大まかには「演繹」「帰納」「仮説形成」ってのがあります。
まあ他にもあるかもしれませんが、
基本、人間が使ってる推論は↑の3つです。
ちなみに数学では「演繹」が主役
他のは『超数学』あるいは『哲学』の領域になります。
「帰納」や「仮説形成」は正しさが曖昧なので。
いろんな演繹操作
|| 正しさを整理するための推論のルール
これは新しいものも作れるので、
そういうものも含めればかなりたくさん存在します。
とはいえ、実際に使うものは限られていて、
使うのはだいたい「演繹」と「全称化」
それ以外はあまり使われません。
モーダス・ポーネンス Modus Ponens
|| ~なら~だよね の感覚(演繹そのもの)
「 φ 」と「 φ→ψ 」が正しいことから、
「 ψ が正しい」って言っちゃって良い「規則」のこと。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle φ,φ→ψ&\vdash&ψ \\ \\ φ∧(φ→ψ)&\vdash&ψ \end{array}
ヒルベルト流とかいう
なんかかっちょいい名前の流派ではこいつが主役です。
まあこれに関しては至極真っ当な話としか言えませんね。
「あれだ」も「あれならこれだ」も正しい
なら「これ」も正しいって言ってるだけですし。
集合での表現
「 φ は論理式である」っていう主張を
「論理式 \mathrm{Well}\text{-}\mathrm{Formed}\,\,\mathrm{Formula} 」から
「 \mathrm{WFF}(φ) 」みたいな記号で表すとします。
\begin{array}{llllllllllll} \mathrm{MP}&=& \{ (φ,(φ→ψ),ψ) \mid \mathrm{WFF}(φ,ψ) \} \end{array}
するとこの「モーダス・ポーネンス」は
こういう風に書かれたりすることがあって
「 (φ,(φ→ψ),ψ)∈\mathrm{MP} 」ってなってる時
「 ψ 」は \mathrm{MP} による「 φ,φ→ψ 」からの導出である
とまあこんな感じに表現されたりしますね。
知らないと読めないです。これは。
全称化 Generalization
|| 全って言葉を使いたい時の表現
変数「 x 」と論理式「 φ 」から
「 ∀x\,φ 」を導いちゃっていいよって言ってる規則
\begin{array}{lllllllll} \displaystyle \mathrm{GEN}&=&\{ (φ,∀x\,φ) \mid \mathrm{WFF}(φ)∧\mathrm{Var}(x)\} \end{array}
まあつまり記号だとこんな感じで、
(φ,∀x\,φ)∈\mathrm{GEN} っていう記号の意味は、
∀x\,φ は φ からの全称化による導出である、です。
LKの推論規則
|| 正しい推論のやり方をまとめたやつ
すっごい代表的な推論規則のこと。
LK の由来は「論理計算 Logischer Kalkül(ドイツ語)」
ちなみにこいつは
『一階述語論理』では「完全」かつ「健全」で、
『正しいものから正しいものを確実に作れます』
まあ「そうなるように創られたから」当然ではありますが、
ともかく、だからこそこれは推論のスタンダードになります。
(十全に理解するには「シークエント計算」の知識が必要)
演繹 Deduction
|| ~なら~でしょ っていうこの感覚
「前提から結論を得る」基本的な推論のやり方。
記号論理学の基礎とも言える部分。
『命題記号のみ』の「命題計算」と
『述語記号も使う』「述語計算」の2つがあります。
前件肯定 \mathrm{Modus \,\, Ponens}
「~なら ~だ」とか
「~だから ~でしょ」とかの感覚
\begin{array}{llllll} φ∧(φ→ψ)&\vdash&ψ \end{array}
これは「推論」の基本になります。
「正しいもの(前提)」があって
「前提+結論(文全体)が正しい」なら
「結論は正しい」
\begin{array}{llllll} φ∧(φ→ψ)&\vdash&ψ \end{array}
これがこの記号の意味になります。
後件否定 \mathrm{Modus \,\, Tollens}
これは↑のものと本質的には同じものです。
「間接証明」なんて呼ばれることもあります。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle (φ→ψ)∧¬ψ &\vdash& ¬φ \end{array}
真理値を見ないとちょっと分かんないかも?
\begin{array}{cccccccccc} \displaystyle φ&ψ&¬φ&¬ψ&&φ→ψ \\ \\ 0&0&1&1&&1 \\ \\ 0&1&1&0&&1 \\ \\ 1&0&0&1&&0 \\ \\ 1&1&0&0&&1 \end{array}
\begin{array}{cccccccccccccc} \displaystyle ¬φ&¬ψ&&φ→ψ \\ \\ 1&1&&1 \\ \\ 1&0&&1 \\ \\ 0&1&&0 \\ \\ 0&0&&1 \end{array}
\begin{array}{cccccccccccccc} \displaystyle ¬φ&¬ψ&&φ→ψ \\ \\ 1&1&&1 \\ \\ 1&0&&1 \\ \\ 0&0&&1 \end{array}
まあこんな感じなんですが、
ちょっとややこしいかもしれません。
三段論法 \mathrm{Syllogism}
実は三段論法は2つあって、
どちらもわりと使うものだったりします。
\begin{array}{llllllllllll} \displaystyle (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash&φ→ω \\ \\ (φ∨ψ)∧¬ψ &\vdash&φ \end{array}
上のは「仮言三段論法 \mathrm{Hypothetical \,\,Syllogism} 」(有名な方)
下のを「選言三段論法 \mathrm{Disjunctive \,\, Syllogism} 」と言います。
\begin{array}{llllllllll} \displaystyle (φ∨ψ)∧¬ψ &\vdash&φ \end{array}
選言三段論法の方はかなり実践的です。
「 φ,ψ のどっちかは正しい」「 ψ は違う」
なら「 φ は正しい」っていう消去法の話なので。
\begin{array}{lllllllll} \displaystyle (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash&φ→ω \end{array}
仮言三段論法の方もわりと実践的ですね。
「 φ→ψ→ω なら φ→ω 」っていう
いわゆる『情報の省略(要約)』で役に立つので。
汎化 \mathrm{Generalization}
述語記号を採用するためのルール
要は「量化子」を使う場合の演繹操作の話です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x\, φ(x) &&\mathrm{Universal} \\ \\ φ(a) &\vdash& ∃x \,φ(x)&&\mathrm{Existential} \end{array}
「 \vdash φ(x) 」は『確定で真』を表現する記号です。
「 a 」は「なんらかの定数」とします。
ちなみに演繹でのこれらの名前は
「普遍汎化 \mathrm{Universal} \,\, \mathrm{Generalization} 」
「存在汎化 \mathrm{Existential} \,\, \mathrm{Generalization} 」です。
存在汎化はあんまり意識しませんが、
普遍汎化は「一般化(まとめ)」でわりと使うので
そこそこ実践的な演繹操作になります。
帰納 Induction
|| いくつかそう → 全部そう
「いくつかの事例」から『全部そうだ』とする推論の方法
\begin{array}{lllllllll} \displaystyle φ(a)→ψ(b) &\vdash &φ→ψ \end{array}
まあいわゆる「経験則」はだいたいこれで、
そういう因果関係の推定でこれはよく使われます。
具体例
だいたい合ってる事例↓
「自分は休んだら疲れがとれた」→「休むと疲れがとれる」
「自分は見たら形が分かった」→「見ると形が分かる」
間違ってる事例↓
「トイレに行ったら家が壊れてた」→「トイレ行ったから家が壊れた」
「祈ったら良いことが起きた」→「祈ると良いことが起きる」
仮説形成 Abduction, Retroduction
|| x は B で A なら B である → x は A だ
「~のはずだ」ってすると正しくなるやつ。
\begin{array}{llllll} \displaystyle (φ→ψ)∧ψ&\vdash& φ \end{array}
前後の関係からどっちにも当てはまるとするやり方で、
「前件肯定」と違い「後件」を肯定する逆の操作です。
具体例
だいたい合ってる事例↓
「彼は入試で合格点をとれた」
「学歴が良いなら入試で合格点をとれた」→「彼は学歴が良い」
「原子の電子は原子核に落ちない」
「エネルギーが0より上なら原子核に落ちない」
→「原子の電子はエネルギーが0より上」
変な事例↓
「彼は動物である」
「多くの触手を持つなら動物である」→「彼は多くの触手を持つ」
「あいつは怖い」
「彼が犯罪者であるなら彼は怖い」→「あいつは犯罪者だ」
誤謬
|| 論証が妥当じゃないこと
「誤った結論を導く推論」の『間違い』の総称
有名なやつだと
「偏ったサンプル」「前後ですぐ因果関係があると思う」
「相関と因果関係をごっちゃにする」とか
わりとよく見るやつだと
「漏れがある二分法」「例外の無視」とか
まあこういうのがありますね。
どれも結構見るので実践的です。
論点先取
|| 証明する必要があるのに無条件で正しいとする
なんか変なのが正しいことになってる誤謬の一種。
『証明が必要』ながら暗黙の内に正しいとされる間違い。
これは『同じ』を表現する「 = 」に並んで、
人間の勘違いを引き起こす大きな要因の一つです。
具体例
現代で一番有名な虚偽を目的とした論点先取の例↓
「平等は正義である」「差別は悪である」
「平等は正義」だから「優れているのも劣っているのも悪」
「差別は悪である」だから「優劣をつけてはならない」
よく見る論点先取の例↓
「正論を言う人は正義である」
「正義は悪に対して何をしても良い」
「自分は正論を言っている」だから「自分は正義である」
「正義は悪に対して何をしても良い」だから「戦争もOK」
論理的推論
「演繹 \mathrm{Deduction} 」
「帰納 \mathrm{Induction} 」
「仮説形成 \mathrm{Abduction} 」の3つがあって
\begin{array}{llllll} \displaystyle φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ &&\mathrm{Deduction} &&\mathrm{True} \\ \\ \displaystyle φ(a)→ψ(b) &\vdash &φ→ψ &&\mathrm{Induction} &&\mathrm{Unknown} \\ \\ \displaystyle (φ→ψ)∧ψ&\vdash& φ &&\mathrm{Abduction} &&\mathrm{Unknown} \end{array}
基本、演繹の \mathrm{Modus \,\, Ponens} で比較ができます。
帰納はちょっと毛色が違いますが。
演繹 Deduction
『真なる命題』と『妥当な推論規則』から
『確実に真になる命題』を導く操作
\begin{array}{lllllll} \displaystyle \displaystyle φ∧(φ→ψ)&\vdash& ψ &&\mathrm{Modus \,\, Ponens} \\ \\ (φ→ψ)∧¬ψ&\vdash& ¬φ &&\mathrm{Modus \,\, Tollens} \\ \\ \\ (\vdash φ(x))&\vdash& ∀x \, φ &&\mathrm{Universal \,\, Generalization} \\ \\ φ(a)&\vdash& ∃x \, φ &&\mathrm{Existential \,\, Generalization} \end{array}
基礎的なものは以上の4つ
\begin{array}{llllll} \displaystyle φ,ψ&\vdash& φ∧ψ &&\mathrm{Conjunction \,\, Introduction} \\ \\ φ&\vdash& φ∨ψ &&\mathrm{Disjunction \,\, Introduction} \end{array}
他にも一応こういうのも基礎的ではありますが
これらは当然すぎて意識することは無いですね。
\begin{array}{lllll} \displaystyle (φ→ψ)∧(ψ→ω)&\vdash& φ→ω &&\mathrm{Hypothetical \,\, Syllogism} \\ \\ (φ∨ψ)∧¬φ&\vdash& ψ &&\mathrm{Disjunctive \,\, Syllogism} \end{array}
応用的なものとしては、
「仮言三段論法 \mathrm{Hypothetical \,\, Syllogism} 」と
「選言三段論法 \mathrm{Disjunctive \,\, syllogism} 」はよく使われます。