|| 数学と言えば命題ってなってほしい
この記事では『命題』の中身の詳細を扱います。
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具体的には「記号」についてですね。
それぞれ「項」「論理式」みたいな単語があって、
ざっくり言えば、命題はその組み合わせでできてるんで、
ここではその解説をする感じです。
目次
記号について
論理記号「 \mathrm{and} とか \mathrm{or} とかを表す記号」
非論理記号「論理記号じゃない記号」
項「いわゆる一個のもの」
論理式「命題の厳密な定義」
原子論理式「項と項を繋いだ論理式の最小単位」
論理記号 Logical Symbol
|| 論理な記号ってどういう意味?
これは『演繹ができる記号』のことで、
まあつまり『一階述語論理で採用されてる記号』のこと。
\begin{array}{lllllll} 1&\top&\mathrm{T}&&&\mathrm{True} \\ \\ 0&\bot&\mathrm{F}&&&\mathrm{False} \\ \\ \\ \lnot & & &&&\mathrm{not} \\ \\ \land && &&& \mathrm{and} \\ \\ \lor && &&& \mathrm{or} \\ \\ \displaystyle \to & & &&&\mathrm{if}\text{-}\mathrm{then} \\ \\ \leftrightarrow&\equiv& &&&\mathrm{equal} \\ \\ \\ \forall&& &&&\mathrm{All} \\ \\ \exists&& &&&\mathrm{Exist} \\ \\ \\ ()&& &&&\mathrm{unit} \\ \\ \coloneqq&\equiv& &&&\mathrm{define} \\ \\ \\ \vdash&& &&&\mathrm{proof} \\ \\ \vDash&& &&& \mathrm{implication} \\ \\ \\ \therefore&& &&&\mathrm{Therefore} \\ \\ \because && &&&\mathrm{Because} \end{array}
具体的にはこれらのことです。
どれも学校じゃあんま見ないかもしれませんが、
実は数学の基本的な記号はこっち。あっちはあれです…
非論理記号 Non-(Logical Symbol)
|| というか論理記号じゃない記号
一言で言えば「論理記号じゃない記号」のことです。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle 0&1&2&10 \\ \\ >&<&≧&≦ \\ \\ +&-&×&÷ \end{array}
見ての通り、論理記号以外の記号はたくさんあります。
というか、論理記号はあくまで基礎なので、
当然のように非論理記号の方が多いです。
というか、非論理記号というより、
単に『論理記号ではない記号』と呼んだ方が良くて、
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{non}\text{-}\mathrm{ Logical \,\, Symbol }&\equiv&\mathrm{Symbol}\setminus \mathrm{ Logical \,\, Symbol } \end{array}
『人が扱う記号』のほとんどは
この「非論理記号」に含まれます。
アリティ
あんまり使いませんけど、
「記号がいくつの引数を持つか」を示す値のことを、
こういう風に言うことがあります。
具体的には、
「 =,< 」なら引数は 2 つ必要なので、アリティは 2
(a=b なら、引数は a と b )
次に紹介する 3 つの記号の説明でちょっと使うので、
なんとなく覚えておきましょう。
定数記号
「定数を表す記号」のことを、
そのまんまこんな風に言うことがあります。
具体的には「 0,1,2,10,100,100000,a,b,\mathrm{const} 」とか
こういうやつのことなんですけど、
基本的に、人が使ってる記号のほとんどはこれですね。
ただ、これらはあくまで『記号』でしかなくて、
「解釈されるまで意味を持たない」
ということに注意してください。
というのも、例えば「 5 」を「 n0 」と表しても
分かりにくいとかなじみが無いとか、
そういうのを除けば、これといって特に問題は生じません。
というのも、
両者の『意味の解釈』は「後付け」されるので、
それが「どういう意味を持つか」は、
『決められるまで』不確定。
まあつまり「 5 」なら、
5 だろうが n0 だろうが、
どちらも 1+1+1+1+1 と定義すれば同じなわけです。
はい、とまあそんな感じで、
「定数を表す記号」のことを、定数記号と言います。
厳密には『解釈の一意性』が重要なんですが、
これの厳密な話は哲学の領域になるのでここではカット。
なんにしても、
『厳密に定義されている』状態で、
「それがそうだと分かる」なら、それが『定数』です。
関数記号
「元のものからなにかを得る操作」を表す『記号』
そういう記号のことをこんな風に呼ぶことがあります。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle 1+2&=&3 \\ \\ 3-1&=&2 \end{array}
\begin{array}{lllllll} \displaystyle f(x,y)&=&z \\ \\ +(1,2)&=&3 \\ \\ -(3,1)&=&2 \end{array}
大体は1つか2つのものから
1つのものを得る(必ず1つだけ)やつだけを表していて、
そういう特別な記号の名前として、
「関数記号」なんて言葉がある、って感じですね。
用語としては、
写像(集合論)や射(圏論)の中で、
「ただ一つの値だけを返す」ものがこれで、
「関数」の意味はこれに限定されています。
なので、関数と言われたら、
基本的に複数の値を返すことはないと思ってください。
定数記号との違い
案外、これらの境界は曖昧です。
というのも「アリティ 0 の関数記号」は、
\begin{array}{llllll} \displaystyle f&:&\mathrm{No}&→&f \end{array}
「引数を持たない」ことから、
まあこんな感じの『何も変化が無い写像』になるので、
\begin{array}{lllrlllll} \displaystyle \sum_{k=1}^{n}a_k&=&a_1+a_2+a_3+\cdots +a_{n-1}+a_n&+&0 \\ \\ \displaystyle \sum_{}^{}&=& & &0 \\ \\ \\ \displaystyle\prod_{k=1}^{n}a_k&=&a_1\times a_2\times a_3 \cdots a_{n-1} \times a_n &\times&1 \\ \\ \displaystyle \prod_{}^{}&=& & &1 \end{array}
『演算の性質』と「定義」からこういう感じになって、
『結果的に定数に落ち着く』ことから、
\begin{array}{lllll} \displaystyle \sum_{}^{}&=&0 \\ \\ \displaystyle \prod_{}^{}&=&1 \end{array}
この「関数記号」は、
結果的に「定数記号」とも解釈できちゃうんです。
まあですから、これと定数記号を明確に分けるなら、
実は「アリティが 1 以上」である必要があって、
ここで「アリティ」が必要になる、と。
まあ、区別する必要はあんまりないんですが、
ともかく、こういうこともあるよ
くらいに思ってればそれでOKです。
述語記号
これは「状態」を表す『記号』のことです。
「なには、こういう状態だよ」みたいな。
\begin{array}{llllll} a&∈&S &&& a \,\, \mathrm{ is \,\, an \,\, element \,\, of } \,\, S \\ \\ \displaystyle a&>&b&&& a \mathrm{\,\, is \,\, more \,\, than \,\, } b \end{array}
\begin{array}{llllll} \forall x&A &&&\mathrm{All} \,\, x \,\, \mathrm{are} \,\, A \\ \\ \exists x&B &&&\mathrm{There \,\, exists} \,\, x \,\, \mathrm{that \,\, is} \,\, B \end{array}
代表的なものだとこういうのがありますね。
より意訳するなら、
「 a<b 」は「 a は b よりも小さいよ 」
「 x∈A 」は「 x は A に属してるよ」
とまあこういう感じで、
『記号』はこれらを省略して記述するために存在しています。
ちなみに、
「 ∀ 」は「 ∧ の集まり」で、
「 ∃ 」は「 ∨ の集まり」です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \forall x∈S &A &&\equiv&& \displaystyle \Bigl( \bigwedge_{x∈S} x \mathrm{\,\, is \,\, } A \Bigr) & \mathrm{is \,\, True} \\ \\ \displaystyle \exists x∈S &B &&\equiv&& \displaystyle \Bigl( \bigvee_{x∈S} x \mathrm{\,\, is \,\, } B \Bigr) & \mathrm{is \,\, True} \end{array}
詳しくは述語論理にて。
項 Term
|| 分かるようで分からない単語
一言で言えば「定数と変数」のことです。
「関数記号と数字の組み合わせ」
こういうのも『項』に含まれます。
具体例
定数だと「 0,1,2,3,10,500,1000000,a,b 」とか
変数だと「 x,y,z,k,n,m 」とか
関数記号との組合せだと「 -1,+x,f(3,x)=(3+x) 」とか
この辺りのものをまとめて『項』と呼んでいます。
要は「一塊の記号の列」のことですね。
(その塊の定義は↓)
厳密な定義
帰納的に定義されています。
(自然数 n を使って)
規則は以下の3つです。
「変数と定数」「関数記号」「限定」
規則1(当然)
「定数記号」と「変数」はすべて項である。
\begin{array}{lllll} \displaystyle 0&1&2 \\ \\ a&b&c \\ \\ p&q&r \\ \\ s&t&u \\ \\ x&y&z \end{array}
まあつまり、
こういう記号は全部『項』だよってことです。
規則2(一般化)
「 t_1,t_2,...,t_n 」が項で、
「 f 」が「アリティ n の関数記号」なら、
「 f(t_1,t_2,...,t_n) 」は『項』である。
具体的には、
「 t_1,t_2 」が『項』で、
「 f 」がアリティ 2 の関数記号なら、
「 f(t_1,t_2) 」これもまた『項』だということ。
(これを n 個にしただけ)
より具体的には、
「 f(1,2)=(1+2) 」これが項だって言ってます。
( + はアリティ 2 の関数記号 )
規則3(限定)
上記の『規則1,2で定めたものだけが項である』
(他の規則勝手につけちゃダメ)
論理式・整式 Well-Formed Formula
|| 字面からは意味が掴みにくい
要約すれば「命題を表すもの」のことです。
さて、さてさて、
ここでようやく「命題」が登場しました。
「項」とかなんかいろいろあってあれでしたが、
ここでようやくゴールです。
やっと「数学で扱う一番小さな意味あるもの」として、
「命題」を厳密に定義することができます。
具体例
よく使うのはだいたいアリティ 2 の記号で、
代表的なのだと以下のようなものがあります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle x&=&a \\ \\ x&+&y \\ \\ x&>&y \\ \\ x&∈&A \end{array}
ちなみにアリティ n の記号は
\begin{array}{llllll} \displaystyle f(x_1,x_2,x_3,...,x_n) \\ \\ P(t_1,t_2,t_3,...,t_n) \end{array}
こんなやつです。
「一般形」の記述とかでそこそこ使うので、
プログラミングとかしたい人は覚えといた方が良いかも。
厳密な定義
論理式(あるいは式 Formula)を説明するために、
まずは「原子論理式」について見ていきます。
原子論理式 Atomic Formula
|| 最小サイズの論理式
これは、いわゆる「一番簡単な文」のことです。
まだ『真偽』は分かりません。
アリティ n の述語記号 P と、
n 個の項 「 t_1,t_2,...,t_n 」があって、
このとき、
「 P(t_1,t_2,...,t_n) 」という『記号の列』が、
原子論理式になります。(真偽の割り当てはこの後)
具体例としては、
例えばアリティ 2 の述語記号なら、
\begin{array}{lllll} \displaystyle P(x,y)&≡&x>y \\ \\ P(x,f(x))&≡&x=f(x) \end{array}
こういう感じのやつが「原子論理式」です。
※この概念の注意点
定義に書いてある通り、
これは採用される「記号」によって定義が変化します。
「ある形式で使う記号」が決定されて、
その後に、この概念は完全に定義されるんです。
んで、これを用いることで、論理式は厳密に定義されます。
規則1(そりゃそうだ)
「原子論理式」は論理式である。
これが一個目の規則です。
当然ですね。
んでまあ当然ではあるんですが、
実はこの宣言によって、
\begin{array}{rlc} \displaystyle \mathrm{Atomic \,\, Formula} &∈&\mathrm{Well}\text{-}\mathrm{Formed \,\, Formula} \end{array}
「原子論理式」は初めて『論理式の最小単位』として決定されます。
規則2(結合記号について)
「 φ,ψ 」が論理式を表す記号であるなら、
\begin{array}{llllll} \displaystyle \lnot &φ \\ \\ &φ&\land&ψ \\ \\ &φ&\lor&ψ \\ \\ &φ&\to&ψ \\ \\ &φ&\leftrightarrow&ψ \end{array}
これらも論理式である。
これは単に論理式同士を結合記号を使って繋げても、
そいつは論理式だと言ってるだけです。
具体的には、
例えば「あいつは最低だ」と
「あいつは面白い」っていう論理式があったとして、
「あいつは最低であり、かつ面白い」
これもまた論理式だ、って言ってる感じ。
規則3(量化記号について)
「 φ 」が論理式で、
「 x 」が変数なら、
「 ∀x\,φ,∃x\,φ 」もまた論理式である。
これも単に「量化(大量に繋げる感じ)」しても、
論理式は論理式だと言ってるだけです。
具体的には、
「論理式 A 」があったら、
\begin{array}{lllllll} \displaystyle \forall x &A &&\equiv&& \displaystyle \Bigl( \bigwedge x \mathrm{\,\, is \,\, } A \Bigr) & \mathrm{is \,\, True} \end{array}
これも論理式だって言ってるだけ。
規則4(限定)
『規則1,2,3を満たすものだけが論理式である』
「項」と同じく、ここで限定して論理式を定義します。
まとめ
記号いっぱい
→「関数記号」「定数記号」「変数」で『項』が出来上がり
→「述語記号」「項」で『原子論理式』が完成(真偽割り当て待ち)
→「原子論理式」「論理記号」から『論理式』が誕生しましたとさ
おしまい