|| 一番それっぽい予測(母数を)のこと
「一番ほんとの値っぽい」ものを求めるやり方。
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目次
最尤推定の感じ「サンプリングした結果の再現率」
尤度関数「再現率を表す確率を導ける関数」
尤度方程式「再現率が最大になる時の推定量を求める関数」
これは『最もそれらしい確率』を求める操作のことで
「統計」においてかなり基礎的な操作になります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&≒&\displaystyle\frac{1}{2} \end{array}
具体的には、例えば
「確率が 1/2 じゃないコイン」とか
「確率が 1/6 じゃないサイコロ」とか
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&≠&\displaystyle\frac{1}{2} \end{array}
そういう「普通じゃない確率」の
『実際の確率を求めたい』時
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle P(表)&=&\displaystyle\frac{k}{n} \end{array}
『最尤推定』が使われて
数学的にこのような結論を導いたりします。
具体的な感じ
詳しい話は後でするとして
例えばコイントスをした時に
「 100 回中 90 回」『表が出た』とすると
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&=&\displaystyle\frac{1}{2}&&? \\ \\ P(表)&=&\displaystyle\frac{90}{100}&&\mathrm{True}? \end{array}
まあ明らかな異常値ですから
この場合は「 1/2 で表が出る」とは思えません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&=&\displaystyle\frac{1}{2}&&\mathrm{False} \\ \\ P(表)&=&\displaystyle\frac{90}{100}&&\mathrm{True} \end{array}
こっちの方が正しい気がします。
この時に行った「 90/100 」
これが最尤推定の感覚で
最尤推定では
この感覚を厳密に取り扱っています。
最尤推定の操作
「 10 回中 9 回 表 が出た」とすると
『実際の確率と思われるもの』は
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&=&\displaystyle\frac{1}{2}&&? \\ \\ P(表)&=&\displaystyle\frac{9}{10}&&\mathrm{True}? \end{array}
だいたいこの2つだと言えます。
この時点では
これが最もそれっぽい結論なわけですが
まだこの段階では
『感覚的に最もそれっぽい』だけです。
厳密にそうと言えるわけではありません。
再現率による検証
↑ の感覚を厳密に取り扱いたい。
この要求に使えそうなのが「再現率」で
\begin{array}{llllll} \displaystyle P(表)&=& \displaystyle\frac{9}{10} &&? \end{array}
例えば「確率 1/2 で表が出る」と考えるなら
『 10 回中 9 回表が出る確率』は
\begin{array}{clllll} \displaystyle 表表表表表表表表表\textcolor{skyblue}{裏} &&\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^9 \left(\frac{1}{2}\right)^1 \\ \\ 表表表表表表表表\textcolor{skyblue}{裏}表 &&\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^9 \left(\frac{1}{2}\right)^1 \\ \\ \vdots \\ \\ \textcolor{skyblue}{裏}表表表表表表表表表 &&\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^9 \left(\frac{1}{2}\right)^1 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle {}_{10} \mathrm{C}_{9} \left(\frac{1}{2}\right)^9\left(\frac{1}{2}\right)^1 &=&\displaystyle 10\cdot\frac{1}{2^{10}} \\ \\ &≒&0.00977 &(0.98\%) \end{array}
このように表現できるので
『それがどれくらいの確率で正しいか』
数値で評価できます。
比較すればこれは明らかで
「確率 9/10 で表が出る」と考えれば
『 10 回中 9 回表が出る確率』は
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle {}_{10} \mathrm{C}_{9} \left(\frac{9}{10} \right)^9\left(\frac{1}{10}\right)^1&=&\displaystyle 10\cdot\frac{9^9}{10^{10}} \\ \\ &=&(0.9)^9 \\ \\ &≒&0.387 &(38.7\%) \end{array}
このようになりますから
明らかに
「確率 1/2 である」という仮説よりも
「確率 9/10 である」という仮説の方が正しそうです。
操作の一般形と最大値
コインのような「 2 択」のもので考えてみた場合
『片方が出る確率を p 』として
取り出すサンプルの数を n とするなら
\begin{array}{llllll} \displaystyle f(x,p)&=&\displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot p^x(1-p)^{n-x} \end{array}
「片方が出た回数を x 」とすれば
『サンプリングの再現度』はこのように表現できます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \max\left( \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot p^x(1-p)^{n-x} \right) \end{array}
ということはつまり
これが『最大値』をとる時
『サンプリングの再現度が最大になる』わけですから
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial f(x,p)}{\partial p}&=&0 \end{array}
その時にとる p は
「一番それっぽい確率だ」と言えますよね。
とまあ最尤推定についてはこんな感じで
こういった関数を考えることによって
『最もそれっぽいもの』を求めます。
尤度関数 Likelihood Function
|| 最尤推定用の関数
「サンプルの数や出現回数」を『固定』した上で
『推定量(再現率)を求める』やつ
\begin{array}{llllll} \displaystyle f(x,θ_{\mathrm{est}})&=&{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \\ \\ \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x)&=&{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
『分からない確率』を「推定量 θ_{\mathrm{est}} 」とします。
尤度関数の意味
初見じゃ分からんと思いますが
\begin{array}{llllll} \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x)&=&{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
この式の意味はそう難しいものではありません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
これは先に話した『再現率』を表す関数です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x) \end{array}
「 n 回中 x 回」事象が起きた。
これが「確率が θ_{\mathrm{est}} である」場合に起きる『確率』
\begin{array}{llllll} \displaystyle f(x \,|\, p) \end{array}
あるいは「確率が θ_{\mathrm{est}}=p である」
この時に「 n 回中 x 回」事象が起きる『確率』
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
この2つの意味を持っていて、
先に確定させる方によって意味が変わります。
記号の意味
式が ↑ みたいになっているのは
「変数を減らしたい」「確率を扱う」
こういう要望と事実があったからで
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x)&=&{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
「条件付確率」で定義されているのは
それが都合が良かったからになります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x) \end{array}
尤度関数は『確率を調べたい』ので
「変数 x が固定されている」のはそのため。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ_{\mathrm{est}}\,|\,x)&=&{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
まあつまり
これは「 x が確定している」上での
「確率が θ_{\mathrm{est}} である」場合の『確率』になります。
式の一般性
比較して見てみると
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle \displaystyle {}_{10} \mathrm{C}_{9} \left(\frac{9}{10} \right)^9\left(\frac{1}{10}\right)^1 \\ \\ {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
これが「いろんなことに使えるか」については
ちょっとどうなの?って感じがしませんか。
\begin{array}{llllll} \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
なにせこの式は「2択の確率」を表現する式です。
θ_{\mathrm{est}}^x
ある「事象(コインの表が出るなど)」が
『 n 回の内 x 回起こる確率』を表しているだけで
\begin{array}{llllll} \displaystyle (1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
他の事象についての言及はありません。
「余事象(その事象以外が起きる)」で表現されていますが
その余事象の具体的な中身は不明なままです。
余事象の中身は見なくていい
「それ以外の事象(余事象)」の中身は
『ある事象(サイコロの目が1など)』が確定した後
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
実は具体的に分解することなく扱っても
『再現率』を表現する上で特に問題は生じません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 1&1&2&&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1 \\ \\ 1&1&3&&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1 \\ \\ 1&2&1&&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1 \\ \\ 1&3&1&&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1 \\ \\ 2&1&1 &&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1\\ \\ 3&1&1 &&\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)^1\end{array}
これは「3択」などで見てみると分かると思います。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 6\left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right) \\ \\ \displaystyle 3\left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right)+3\left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{1}{3} \right) \\ \\ \displaystyle 3\left( \frac{1}{3} \right)^2\left( \frac{2}{3} \right) \end{array}
「1つの事象の再現率」
これは他をひとまとめにして扱ったとしても
\begin{array}{llllll} \displaystyle {}_3\mathrm{C}_2 \left( \frac{1}{3} \right)^2 A \\ \\ \displaystyle {}_3\mathrm{C}_2 \left( \frac{1}{3} \right)^2 B \end{array}
事象の確率が係数として確定している以上
特に問題なく求めることができます。
尤度方程式 Likelihood Equation
|| 扱いにくい掛け算を足し算にする感じ
「指数を排除して最大を求める」ための
『尤度関数についての一連の手続き』のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&0 \end{array}
これは『大小比較』のテクニックの1つのようなもので
「指数」が絡む話を解決する手段になります。
指数が入る方程式
尤度関数によって『再現率』は計算できますが
「再現率の最大値」は求めるのが大変です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ_{\mathrm{est}}^x(1-θ_{\mathrm{est}})^{n-x} \end{array}
方程式の中に「指数」が入っているせいで
どうしても計算が複雑になってしまいます。
\begin{array}{llllll} &?& \\ \\ \displaystyle 99^{100}&<&100^{99} \\ \\ \displaystyle 99^{100}&>&100^{99} \end{array}
実際、こういった数値の違いを求めたい時
これはそのまま扱うと大変なことになりますよね。
なので、どうにか簡単にしたいところ。
最大値と微分
『再現率の最大値を求めたい』時
使うのはもちろん「微分」なわけですが
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&0 \end{array}
「尤度関数」をそのまま微分しても
\begin{array}{rlllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ^x(1-θ)^{n-x} \\ \\ \\ \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\Bigl( \displaystyle {}_n\mathrm{C}_x\cdot θ^x(1-θ)^{n-x} \Bigr) \\ \\ &=&\displaystyle {}_n\mathrm{C}_x \frac{\partial}{\partial θ}\Bigl( \displaystyle θ^x(1-θ)^{n-x} \Bigr) \end{array}
式が複雑過ぎてなんだかよくわかりません。
(通常の方程式を解くようには解けません)
関数の最大と指数の最大
指数関数 a^x を「微分」して
「極値(最大値など)」を求めようと思うと
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{d}{dx}a^x&=&\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h} \\ \\ &=&\displaystyle a^x\log a \displaystyle \end{array}
解は指数に来るため
「 n 次方程式」として解くことはできません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a^x\log a&=&0 \end{array}
まあつまり「はっきりとした答え」を求められないので
このままでは『再現率の最大』を求めることができません。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a<b&&⇒&&e^a<e^b \\ \\ a<b&&⇐&&e^a<e^b \end{array}
ここで出てくるのが「指数に注目する」考え方で
この『指数だけを取り出す』操作として
\begin{array}{llllll} \displaystyle a^x&=&b \\ \\ x&=&\log_a b \end{array}
\begin{array}{llllll} 3&=&2^{\log_2 3} \\ \\ a&=&e^{\log_e a} \\ \\ \displaystyle e^x&=&e^{\log_e e^x}\end{array}
「対数」という考え方が活躍します。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&e^{\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)} \end{array}
尤度方程式の形を見ればわかると思いますが
あの部分は「指数」を表す部分です。
指数と対数関数
「指数」に解が来る場合
微分してもうまく最大値を計算できませんが
\begin{array}{llllll} \displaystyle a<b&&⇒&&e^a<e^b \\ \\ a<b&&⇐&&e^a<e^b \end{array}
「 e>1 」である以上
「指数の大小」が比較できさえすれば
『元の関数の大小』は比較できるので
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle \mathrm{Lik}(θ\,|\,x) \\ \\ \log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x) \end{array}
指数法則を考えて
\begin{array}{llllll} \displaystyle 6&=&2^{\log_2 6} \\ \\ &=&2^{\log_2 2\cdot 3} \\ \\ \\ &=&2^{\log_2 2+\log_2 3} \\ \\ &=&2^{\log_2 2}2^{\log_2 3} \\ \\ &=&2\cdot 3 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle 25&=&3^{\log_3 5^2} \\ \\ &=&3^{\log_3 5+\log_3 5} \\ \\ &=&3^{2\log_3 5} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log_{e}ab&=&\log_{e}a+\log_{e}b \\ \\ \log_e a^x&=&\displaystyle x\log_e a \end{array}
尤度関数の最大を求めるために
『指数の最大』を求めてみれば
\begin{array}{llllll} \displaystyle\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=& \displaystyle \log_{e}{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ^x(1-θ)^{n-x} \end{array}
間接的にではありますが、
尤度関数の最大が求められるんじゃないか
みたいな予想を立てることができます。
対数尤度関数
指数法則の中でも
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log_{e}ab&=&\log_{e}a+\log_{e}b \\ \\ \log_e a^x&=&\displaystyle x\log_e a \end{array}
特にこの2つの性質は非常に重要で
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x) \end{array}
尤度関数をこのような形にすると
\begin{array}{llllll} \displaystyle a^x&→&x\log a \\ \\ ab&→&\log a+\log b \end{array}
「指数」を『掛け算』に
「掛け算」を『足し算』に変換することができます。
\begin{array}{rlllll} \displaystyle \displaystyle \log_{e}{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ^x(1-θ)^{n-x} \\ \\ θ^x(1-θ)^{n-x} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle θ^x(1-θ)^{n-x} &→& \log θ^x + \log (1-θ)^{n-x} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log θ^x&=&x\log θ \\ \\ \log (1-θ)^{n-x}&=&(n-x)\log (1-θ) \end{array}
そしてこの時に出てくる ↓ が
\begin{array}{llllll} \displaystyle \begin{array}{llllll} \displaystyle \log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x) \end{array} \end{array}
「対数尤度関数」です。
尤度方程式の解
材料がそろったので
「尤度方程式」から
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&0 \end{array}
『最尤推定量 θ 』を求めてみます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=& \displaystyle \log_{e}{}_n\mathrm{C}_x\cdot θ^x(1-θ)^{n-x} \\ \\ &=&\displaystyle \log_{e}\frac{n!}{(n-x)!x!}θ^x(1-θ)^{n-x} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log_{e}ab&=&\log_{e}a+\log_{e}b \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\log_{e}n!+\log_{e}((n-x)!)^{-1}+\log_{e}(x!)^{-1} \\ \\ &&+\log_{e}θ^x+\log_{e}(1-θ)^{n-x} \end{array}
パターン数を表している
\log_{e}n!+\log_{e}((n-x)!)^{-1}+\log_{e}(x!)^{-1}
この部分は「定数(変化しない)」なので
「 θ を変化させる偏微分」をする場合
「変化しない項」として消えてしまいます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle\frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\displaystyle\frac{\partial}{\partial θ} \Bigl( \log_{e}θ^x+\log_{e}(1-θ)^{n-x} \Bigr) \\ \\ &=&\displaystyle \frac{\partial}{\partial θ} \Bigl( x\log_{e}θ+(n-x)\log_{e}(1-θ) \Bigr) \end{array}
なので見るべき部分はここだけですから
この部分だけ整理していけばいいので
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\Bigl( x\log_{e}θ+(n-x)\log_{e}(1-θ) \Bigr) \\ \\ &=&\displaystyle \displaystyle x\frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}θ +\displaystyle (n-x)\frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}(1-θ) \\ \\ &=&0 \end{array}
後は変形していけば導けそうです。
対数関数の微分
対数関数の微分は ↓ のようになります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle \frac{d}{dx}\log_ex&=&\displaystyle\frac{1}{x} \end{array}
この証明は少し複雑ですが
\begin{array}{llllll} \displaystyle \log (x+h)-\log x&=&\displaystyle \log\frac{x+h}{x} \\ \\ &=&\displaystyle \log\left(1+\frac{h}{x}\right) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{d}{dx}\log x&=&\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{\log (x+h)-\log x}{(x+h)-x} \\ \\ &=&\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{1}{h}\log\left(1+\frac{h}{x}\right)\end{array}
「ネイピア数 e (微分の単位)」を構成する
というちょっとだけ突飛な発想に至れば
\begin{array}{llllll} \displaystyle e&=&\displaystyle\lim_{n\to \infty}\left( 1+\frac{1}{n} \right)^n \\ \\ &=&\displaystyle\lim_{n\to 0}\left( 1+n \right)^{ \frac{1}{n}} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left(1+\frac{h}{x}\right) &→&(1+k) \\ \\ \displaystyle\frac{1}{h}&→&\displaystyle\frac{1}{x}\frac{x}{h} &→&\displaystyle\frac{1}{x}\frac{1}{k} \end{array}
\begin{array}{llllll} h\to 0 &&⇒&&\displaystyle \frac{h}{x} \to 0 \end{array}
わりとすんなり導くことができます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{d}{dx}\log x&=&\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{1}{h}\log\left(1+\frac{h}{x}\right) \\ \\ &=&\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{1}{x}\frac{x}{h}\log\left(1+\frac{h}{x}\right) \\ \\ \\ &=&\displaystyle \lim_{k\to 0}\frac{1}{x}\frac{1}{k} \log(1+k) \\ \\ &=&\displaystyle \lim_{k\to 0}\frac{1}{x} \log(1+k)^{\frac{1}{k}} \\ \\ \\ &=&\displaystyle \frac{1}{x}\log e \\ \\ &=&\displaystyle \frac{1}{x} \end{array}
結論がすごいシンプルなのが個人的にグッド。
最尤推定量
ここまでくれば後は作業です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{dy}{dθ}&=&\displaystyle \frac{dy}{dt}\frac{dt}{dθ} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle 1-θ&=&t \end{array}
微分の変数の置き換えさえ理解できていれば
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&\displaystyle x\frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}θ +\displaystyle (n-x)\frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}(1-θ) \\ \\ &=&\displaystyle \frac{x}{θ}+(n-x)\frac{1}{t}(t)^{\prime} \\ \\ &=&\displaystyle \frac{x}{θ}+\frac{n-x}{1-θ} (-1)\\ \\ &=&0 \end{array}
後は単純な式変形を行っていくと
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{x}{θ}+\frac{n-x}{1-θ} (-1)&=&0 \\ \\ \displaystyle \frac{x}{θ} &=&\displaystyle \frac{n-x}{1-θ} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle x(1-θ)&=&(n-x)θ \\ \\ x-xθ&=&nθ-xθ \\ \\ \\ x&=&nθ \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle θ&=&\displaystyle \frac{x}{n} \end{array}
「最尤推定量 θ 」が求められます。
確認しておくと
n は「サンプリングしたサンプルの個数」
x 「ある結果が出た回数」です。
ということはつまり
「 100 回」の内「 90 回表が出た」なら
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{x}{n} \end{array}
この時に『一番もっともらしい表が出る確率』は
「 90/100 である」ということになります。
計算自体はそれなりに複雑でしたが、
最終的に、人間の直観にマッチする結論に至った。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \frac{\partial}{\partial θ}\log_{e}\mathrm{Lik}(θ\,|\,x)&=&0 \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle θ&=&\displaystyle \frac{x}{n} \end{array}
そう思うと
なんというか、不思議な気分になりませんか?