|| 単調族と完全加法族の関係についての定理
「完全加法族」「一意性」に深く関わっています。
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事前知識
集合論「数学の最小単位を扱う分野」
集合の演算「和集合やら補集合やら」
完全加法族「普通のことが普通にできる集合の集まり」
有限加法族「完全加法族の条件を緩めた感じのやつ」
目次
単調族定理「単調族と完全加法族の関係を説明したやつ」
単調族「単調増加・減少列の端っこを含む感じ」
単調族 Monotone Class
|| 上限とか下限についてのやつ
「極限」の集合論的な感覚を表現したもの
(以下の性質を満たす集合族 M のこと)
\begin{array}{llllll} \displaystyle X&≠&∅ \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \{A_1,A_2,A_3,...\}&⊂&M&⊂&2^X \\ \\ \{B_1,B_2,B_3,...\}&⊂&M&⊂&2^X \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂A_3⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈M \\ \\ B_1⊃B_2⊃B_3⊃\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}B_n∈M \end{array}
「測度」が持っていて欲しい性質の1つで
分かりやすく「極限」の性質を表しています。
単調族定理 Monotone Class Theorem
|| 完全加法族になる条件の一つ
「有限加法族 F を含む最小の単調族 M 」は
「 F から作れる完全加法族 σ(F) 」になる
\begin{array}{llllll} F⊂σ&&→&&σ(F) \\ \\ \displaystyle F⊂M&&→&&M(F) \\ \\ \min (M(F)) &&→&&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle σ(F)&=&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
「有限加法族 F 」と
「完全加法族 σ 」の違い
\begin{array}{c} \begin{array}{llllll} \displaystyle μ \left( \bigcup_{i=1}^{n}A_i \right)&=&\displaystyle \sum_{i=1}^{n}μ(A_i) \end{array} \\ \\ ↓ \\ \\ \displaystyle \begin{array}{llllll} \displaystyle μ \left( \bigcup_{i=1}^{\textcolor{pink}{\infty}}A_i \right)&=&\displaystyle \sum_{i=1}^{\textcolor{pink}{\infty}}μ(A_i) \end{array} \end{array}
これを知ってれば
この定理の主張はわりと直感的に分かると思います。
(最小の理由は初見だと分からないかも)
単調族定理の証明
M_{\mathrm{min}}(F) が「完全加法族」である
この証明を行うために
\begin{array}{llllll} \displaystyle\left( \begin{array}{llllll} \displaystyle S≠∅ \\ \\ σ⊂2^S \\ \\ A^c = S\setminus A \end{array} \right) &\to& \displaystyle \left( \begin{array}{rllllll} \displaystyle ∅∈σ \\ \\ A∈σ &\to&A^c ∈σ \\ \\ A_n∈σ &\to&\displaystyle\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈σ\end{array} \right) \end{array}
まずはこの3つの性質を確認していきます。
最小の単調族
「最小の単調族 M_{\mathrm{min}}(F) 」を考えるのはなぜか
\begin{array}{llllll} && && M(F)&⊂&2^X \\ \\ && M_{\mathrm{min}}(F)&⊂& M(F) \\ \\ F&⊂& M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
その最大の理由は
「任意の M(F) が完全加法族ではない」からで
他にも
「単調族全体 \mathrm{Mono} 」を考えた時
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Mono}&=&\{ M \mid M \mathrm{\,\, is \,\, Monotone} \} \\ \\ \mathrm{Mono}(F)&=&\{ M(F) \mid M(F) \mathrm{\,\, is \,\, Monotone} \} \end{array}
↓ のように「共通部分」をとれば
\begin{array}{llllll} \displaystyle \min(M) &=& \displaystyle \bigcap_{M∈\mathrm{Mono}}M \end{array}
『最小の単調族』が得られることから
\begin{array}{ccccccccc} A∈F &→&A∈M_{\mathrm{min}}(F) &→&A∈M(F) &&\mathrm{Fact} \\ \\ A∈F &←&A∈M_{\mathrm{min}}(F) &←&A∈M(F) && \mathrm{Define} \end{array}
このように定義することができるので
ここでは「最小の単調族」が採用されています。
(部分集合 F に寄せられる)
空集合
まず「空集合」についてですが
\begin{array}{llllll} && && M_{\mathrm{min}}(F)&⊂&M(F) \\ \\ \displaystyle ∅&∈&F&⊂&M_{\mathrm{min}}(F) && \end{array}
\begin{array}{llllll} ∅&∈&\displaystyle M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
これは当然こう。
\begin{array}{rcr} \displaystyle && ∅\in F \\ \\ A\in F &→& A^c∈F \\ \\ A,B∈F &→& A∪B\in F \end{array}
「有限加法族 F の定義」より
∅∈F である以上これは明らかです。
補集合
次、補集合についてですが
\begin{array}{rcr} \displaystyle A\in F &→& A^c∈F \\ \\ A^c\in F &→& (A^c)^c∈F \end{array}
これは「有限加法族 F の定義のみ」では
『 M(F) の余計な要素 A_{\mathrm{un}} 』が入り込んで
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_{\mathrm{un}}\not\in F && A_{\mathrm{un}}\in M(F) \\ \\ A_{\mathrm{un}}^c \not\in F && A_{\mathrm{un}}^c \not\in M(F) \end{array}
「その補集合 A_{\mathrm{un}}^c が M(F) に含まれない」
という可能性が出てくるため
\begin{array}{llllll} \displaystyle M_{\mathrm{complement}}(F)&=& \{ A∈2^X \mid A^c∈M(F) \} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle M_{\mathrm{min}}(F)&⊂&M_{\mathrm{complement}}(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A∈M_{\mathrm{min}}(F)&&→&&A^c∈M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
それを避けるために
このような「単調族 M_{\mathrm{complement}}(F) 」を定義し
『中身を制限する』必要があります。
完全加法
これについても
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈σ &\to&\displaystyle\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈σ \end{array}
「単調族 M の定義」から
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...&∈&M(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈M(F) \end{array}
M_{\mathrm{min}}(F) もまた「単調族」であるため
条件そのものはすぐに求められそうですが
\begin{array}{llllll} \displaystyle \{A_1,A_2,...,A_n,...\}&⊂&M(F) \end{array}
この「単調族 M(F) 」は
「有限加法族 F を含む」上に
『最終着地が完全加法族 σ 』です。
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_n^c&∈&M(F) \end{array}
まあつまり結論を考えると
M(F) は必ず「補集合」を含まなければならず
これの「和集合」もまた含まなければなりません。
特に『最小の単調族 M_{\mathrm{min}}(F) 』については
\begin{array}{llllll} F &⊂&\displaystyle M_{\mathrm{min}}(F)&⊂& \{ A∈2^X \mid A^c∈M(F) \} \end{array}
この制限かかかることになるので
確実に「補集合」を含むことになります。
まとめると
この時点では
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n &∈&M(F) \end{array}
「単調族の定義」から
「一部では」こうなる
ということは分かっていますが
\begin{array}{rcr} \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n&∈&M(F) \\ \\ \displaystyle \left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n \right)∪\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n \right) &∈&M(F) \end{array}
全部でこうなるかどうかは分かっていません。
↓ のやつについては
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n \right)∪\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n \right) &∈&M(F) \end{array}
確実に「全体 X 」になるので
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_n∪A^c_n&=&X \end{array}
\begin{array}{rcr} A∈F &→&A^c∈F \\ \\ \displaystyle ∅∈F &→&X∈F \end{array}
「有限加法族 F の定義」から
「単調族 M(F) 」の中に必ず含まれると言えて
同様に、有限の加法についても
\begin{array}{lclccc} \displaystyle A,B∈F&→&A∪B∈F &&〇 \\ \\ A,B∈M(F)&→&A∪B∈M(F) &&? \end{array}
結論となる「完全加法族」が
「有限の加法について閉じている」上に
以下が「有限加法族 F の定義」より明らかなことから
\begin{array}{ccccc} A,B∈M(F) &&→&& A∪B∈M(F) \end{array}
例えば ↓ のように
\begin{array}{ccc} \displaystyle M_{\mathrm{sum}}(F)&=&\{ A,B∈M(F) \mid A∪B∈M(F) \} \end{array}
「 A,B が含まれている」こと前提の
「和集合 A∪B 」による制限をかければ
「有限加法族 F の定義」から
\begin{array}{lcc} A^c∪B^c &∈&M_{\mathrm{min}}(F) \\ \\ \displaystyle A∪B^c &∈&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
これらもまた確実に含むと言えます。
となると
残るは以下についてなんですが
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n&∈&M(F) &&? \end{array}
これについてはまだ
M_{\mathrm{min}}(F) が含むかどうか分かっていません。
(集合の演算を理解していれば含みそうだと分かる)
補集合と完全加法
というわけで
これが含まれるかどうか確認していきます。
(有限加法族と単調族の定義だけで)
\begin{array}{llllll} \begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈M(F) \\ \\ B_1⊃B_2⊃\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}B_n∈M(F) \end{array} \end{array}
そのために
一通り定義を確認しておくと
\begin{array}{llllll} \displaystyle\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n &∈&σ \end{array}
まずゴールはここ
\begin{array}{rcr} \displaystyle A\in F &→& A^c∈F \\ \\ A^c\in F &→& (A^c)^c∈F \end{array}
「有限加法族 F の定義」からこれは明らかで
\begin{array}{ccc} \displaystyle (A_1∩A_2)^c&=&A^c_1∪A^c_2 \\ \\ \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c &=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n \end{array}
\begin{array}{rcccr} A\in F &&→&& A^c∈F \\ \\ \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\in F &&→&& \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c\in F \end{array}
「集合の演算」を思い返してみると
このような変形が可能である
ということも思い起こされます。
というわけで
以上を踏まえて
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n &∈&M(F) \end{array}
この結論を得る方法を考えると
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c &=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n \end{array}
自然とこの関係に行き着くことから
↓ のゴールを考えてみると
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\in F &&? \end{array}
「共通部分」が含まれる
ということを確認したくなります。
\begin{array}{rcccr} \displaystyle A\in F &&→&& A^c∈F \\ \\ \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\in F &&→&& \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c\in F \end{array}
そこで
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,A_3,...,A_n,...&∈&M(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈M(F) \end{array}
前提となるこの事実を踏まえて
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n \end{array}
これについて考えてみると
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n=A_1 \end{array}
A_1 が「全ての A_n の部分集合」である以上
これは明らかにこうなることから
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,A_3,...,A_n,...&∈&M(F) \end{array}
この前提を踏まえれば
\begin{array}{ccc} A_1&∈&M(F) \\ \\ \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n&∈&M(F) \end{array}
間違いなくこうだと言えます。
\begin{array}{rcccrccr} A\in F &&→&& A^c∈F \\ \\ \displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\in F &&→&& \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c\in F \\ \\ \displaystyle &&&& \displaystyle \left(\bigcap_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c\in F&&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n\in F \end{array}
ということは
これらが明らかなので
\begin{array}{llllll} \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A^c_n &\in& F \end{array}
結果として
「補集合 A^c 」の「無限和」もまた
「単調族 M(F) 」に含まれることが分かります。
任意の無限和
以上の結果より
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n \end{array}
「無限和が存在する」なら
「その構成要素を全て含める」という形にすれば
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈M(F) &&←&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈σ(F) \end{array}
「単調族」の定義から
「無限和の構成要素」を全て含めると
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈M(F) \end{array}
この「無限和」を M(F) は持つと言えるので
結果
「含むかどうか不明な無限和」に対し
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈M(F) &&←&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈σ(F) \end{array}
「単調族で定義される無限和」を構成するような
「無限和の構成要素の全て」を含めるとすれば
「 σ(F) 上の要素で構成可能」な
「全ての無限和」を含めることができ
\begin{array}{llllll} σ(F) &⊂&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
結果として
この関係を得ることができます。
無限和を単調増加列で構成できる
本当に「全ての無限和は構成可能か」
この点はちょっと疑問なので確認しておくと
\begin{array}{llllll} X&=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty} X_n \end{array}
まず「全体 X 」については
\begin{array}{llllll} X_1⊂X_2⊂\cdots⊂X_n⊂\cdots &⊂&X \end{array}
「 X の部分集合」の中にある
「 F の要素で構成できる単調増加列」の
「和集合」を考えると
\begin{array}{ccc} \{a,b\} &=&\{a\}∪\{b\} \\ \\ X_{n+1} &=&X_{n}∪S_n \end{array}
\begin{array}{lllllcl} X_1 && ⊂ && X_1∪X_2 &=& X_2 \\ \\ X_2 && ⊂ && X_2∪X_3 &=& X_3 \\ \\ && && &\vdots \\ \\ X_n && ⊂ && X_n∪X_{n+1} &=& X_{n+1} \end{array}
例えばこのように
単純に「要素を追加する」感じで構成すれば
\begin{array}{ccc} X_1⊂X_2⊂\cdots⊂X_n⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty} X_n \end{array}
\begin{array}{llllll} n\to\infty &&⇒&& X_n\to X \end{array}
F の中に含まれる要素で
これは確実に構成可能になります。
全ての要素は単調増加列で構成可能
そしてこれを考えると
「 X は全体」ですから
\begin{array}{llllll} A&=&A∩X \\ \\ &=&\displaystyle A∩\bigcup_{n=1}^{\infty}X_n \end{array}
「最大の集合族 2^X 」に含まれる
「任意の無限和 A 」は
\begin{array}{llllll} \displaystyle A∩(B∪C)&=&(A∩B)∪(A∩C) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A∩\bigcup_{n=1}^{\infty}X_n &=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A∩X_n \end{array}
このように変形できるので
\begin{array}{llllll} A_1⊂A_2⊂A_3⊂\cdots ⊂A \end{array}
\begin{array}{llllll} A&=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n \end{array}
この着地を考えると
\begin{array}{rcr} \begin{array}{r} A∈F \\ \\ X_n∈F \\ \\ (A^c∪X_n^c)^c∈F \end{array} &&→&& A∩X_n∈F \end{array}
「完全加法族 σ(F) 」は
「共通部分」を含むことから
\begin{array}{lclcl} X_1 &→& (A∩X_1) &&A∩X_1∈M(F) \\ \\ X_1 ⊂ X_2 &→& (A∩X_1) ⊂ (A∩X_2) &&A∩X_2∈M(F)\\ \\ X_2 ⊂ X_3 &→& (A∩X_2) ⊂ (A∩X_3) &&A∩X_3∈M(F) \\ \\ X_3 ⊂ X_4 &→& (A∩X_3) ⊂ (A∩X_4) &&A∩X_4∈M(F) \\ \\ &\vdots \\ \\ X_n ⊂ X &→& (A∩X_n) ⊂ (A∩X) &&A∩X∈M(F) \end{array}
例えばこれはこうなるので
\begin{array}{llllll} && F&⊂& M_{\infty}(F) \\ \\ \{ X_1,X_2,X_3,...X_n,... \}&⊂& F \end{array}
この前提の元
\begin{array}{llllll} M_{\infty}(F)&=&\left\{ A∈2^X \,\,\middle| \,\, \forall n∈N \,\, A∩X_n ∈ M(F) \right\} \end{array}
このようにすれば
\begin{array}{llllll} A_n&=&A∩X_n \end{array}
\begin{array}{llllll} A_1⊂A_2⊂A_3⊂ \cdots ⊂A_n⊂\cdots \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A &=&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n \end{array}
「全ての無限和 A 」を
「単調増加列」で構成することができます。
整理しておくと
\begin{array}{ccccc} \{ X_1,X_2,X_3,...X_n,... \}&⊂& F &⊂&M(F) \\ \\ \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty} A_n &∈& M(F) &⊂& 2^X \end{array}
要素それぞれの所在はこうなります。
σ(F)⊂2^X なので σ(F) よりも広いです。
同値性
以上のことから
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(F)&→&σ(F) \end{array}
「有限加法族 F を含む」
「最小の単調族 M_{\mathrm{min}}(F) 」が
「完全加法族 σ(F) 」であることは示されましたが
\begin{array}{c} σ(F)&=&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
まだこの関係は得られていません。
\begin{array}{llllll} M(F)&←&σ(F) \end{array}
『 F の要素で単調族 M(F) を構成できる』以上
この結論は直感的には明らかですが
念のため証明しておきます。
そのために
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(F)&→&σ(F) &&〇 \\ \\ M(F)&←&σ(F) &&? \end{array}
「有限加法族 F を含む単調族 M(F) から」ではなく
「 F の要素で構成できる完全加法族 σ(F) から」
「単調族」を構成してみます。
定義の確認
というわけで確認していくと
\begin{array}{rcr} \displaystyle && ∅\in σ \\ \\ A\in σ &→& A^c∈σ \\ \\ A_1,A_2,...,A_n,...∈σ &→& \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\in σ \end{array}
まず「完全加法族 σ 」はこれで
\begin{array}{rcr} \{A_n\}⊂M &→& \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈M \\ \\ \{B_n\}⊂M &→& B_1,B_2,...,B_n,...∈M \end{array}
\begin{array}{llllll} \begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈M \\ \\ B_1⊃B_2⊃\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}B_n∈M \end{array} \end{array}
「単調族 M 」はこれです。
ざっくりとした方針
以上の各用語の定義と着地を考えると
\begin{array}{llllll} \displaystyle \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈σ \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈σ \end{array}
これを満たして
\begin{array}{llllll} \displaystyle B_1,B_2,...,B_n,...∈σ \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle B_1⊃B_2⊃\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}B_n∈σ \end{array}
これも満たせば
「完全加法族から」「単調族」を構成できる
そう言えるので
そういった都合の良い操作を考える必要があります。
単調増加列
といっても使えるものは限られてるので
とりあえず分かりやすい形として
\begin{array}{llllll} \displaystyle A&⊂&A∪B \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A,B∈F &→& A∪B\in F \end{array}
「有限加法族 F の定義」から
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1∪A_2&=&A_2 \\ \\ A_n∪A_{n+1}&=&A_{n+1} \end{array}
こんな感じの
\begin{array}{ccr} A_n&⊂&A_n∪A_{n+1} \\ \\ A_n&⊂&A_{n+1} \end{array}
「 A_{n} の要素を全て持つ集合 A_{n+1} 」を定義して
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1&⊂&A_2&⊂&\cdots \end{array}
シンプルな「単調増加列」を構成してみます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈σ(F)&→& \displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈σ(F) \end{array}
すると
「有限加法族 F 」から構成できる
「完全加法族 σ(F) の定義」を考えると
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...&∈&σ(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} A_1⊂A_2⊂\cdots&→&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈σ(F) \end{array}
そのまま「単調族の定義」が得られるので
まずこの定義を満たすことに成功します。
単調減少列
残る「減少列」についてですが
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1∪A_2&=&A_2 \\ \\ A_n∪A_{n+1}&=&A_{n+1} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1&⊂&A_2&⊂&\cdots \end{array}
これは「単調増加列」から構成できる
「補集合」について考えてみると
\begin{array}{rcl} \displaystyle (A_1∪A_2)^c&=&A^c_1∩A^c_2 \\ \\ (A_2)^c&=&A^c_1∩A^c_2 \end{array}
\begin{array}{llllll} (A_{n+1})^c&=& A^c_n∩A^c_{n+1} \\ \\ && A^c_n∩A^c_{n+1}&=&A^c_{n+1} \end{array}
\begin{array}{rcl} \displaystyle A^c_1∩A^c_2&⊂&A^c_1 \\ \\ A^c_2&⊂&A^c_1 \\ \\ A^c_n∩A^c_{n+1}&⊂&A^c_n \\ \\ A^c_{n+1}&⊂&A^c_n \end{array}
これは明らかに「単調減少列」になる上に
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1^c&⊃&A_2^c&⊃&\cdots&⊃&A_n^c &⊃&\cdots \end{array}
この「共通部分」は
「完全加法族」の要素である以上
\begin{array}{llllll} \displaystyle \left( \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n\right)^c ∈σ(F) &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A^c_n∈σ(F) \end{array}
必ず以下のようになります。
\begin{array}{lcr}A_1,A_2,...,A_n,...&∈&σ(F) \\ \\ \displaystyle A_1^c,A_2^c,...,A_n^c,...&∈&σ(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle A_1^c⊃A_2^c⊃\cdots &→&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}A^c_n∈σ(F) \end{array}
以上のことから
結果的に全ての単調族の性質を満たせたので
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(F)&←&σ(F) \end{array}
これで「 F からできた完全加法族 σ(F) から」
「単調族」が構成できました。
同じになる
以上のことを整理してみると
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(F)&→&σ(F) &&〇 \\ \\ M(F)&←&σ(F) &&〇 \end{array}
まず「単調族 M(F) から」構成された
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(F)&→&σ(F) \end{array}
「有限加法族 F の要素で作られた」
「完全加法族 σ(F) 」は
\begin{array}{llllll} \displaystyle σ(F) && &⊂&M(F) \\ \\ && M_{\mathrm{min}}(F) &⊂&M(F) \\ \\ σ(F) &⊂& M_{\mathrm{min}}(F) && \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle σ(F) &⊂& M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
当然ですが
「 M(F) の要素から作られている」以上
「単調族 M(F) 」の「部分集合」です。
そして
「完全加法族 σ(F) から」構成された
「単調族 M(σ(F)) 」は
\begin{array}{llllll} \displaystyle M(σ(F))&←&σ(F) \end{array}
「完全加法族 σ(F) の要素のみ」で構成されている以上
\begin{array}{llllll} \displaystyle M_{\mathrm{min}}(F)&⊂&M(σ(F)) \end{array}
「最小の単調族 M_{\mathrm{min}}(F) 」を考えれば
\begin{array}{llllll} \displaystyle σ(F) &⊃& M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
同様の理屈で
「 σ(F) の部分集合」であると言えるので
↑ で得られた結果をまとめると
\begin{array}{llllll} M_{\mathrm{min}}(F)&⊃&σ(F) &&〇 \\ \\ M_{\mathrm{min}}(F)&⊂&σ(F) &&〇 \end{array}
このような関係が成立すると言えることから
\begin{array}{llllll} \displaystyle M_{\mathrm{min}}(F)&=&σ(F) \end{array}
結果、こうであると言えます。
結論
まとめると
\begin{array}{rcr} \displaystyle && ∅\in F \\ \\ A\in F &→& A^c∈F \\ \\ A,B∈F &→& A∪B\in F \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle F&⊂&M(F) \\ \\ F&⊂&σ(F) \end{array}
\begin{array}{rcr} \{A_n\}⊂M(F) &→& \displaystyle A_1,A_2,...,A_n,...∈M(F) \\ \\ \{B_n\}⊂M(F) &→& B_1,B_2,...,B_n,...∈M(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \begin{array}{llllll} \displaystyle A_1⊂A_2⊂\cdots &&→&&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n ∈M(F) \\ \\ B_1⊃B_2⊃\cdots &&→&&\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}B_n∈M(F) \end{array} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Mono}(F)&=&\{ M(F) \mid M(F) \,\, \mathrm{is \,\, Monotone} \} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle M_{\mathrm{min}}(F)&=&\displaystyle \bigcap_{M(F)∈\mathrm{Mono}(F)} M(F) \end{array}
以上の前提から
\begin{array}{rcr} && ∅∈\displaystyle M_{\mathrm{min}}(F) \\ \\ A∈M_{\mathrm{min}}(F)&→&A^c∈M_{\mathrm{min}}(F) \\ \\ A_1,A_2,...,A_n,...∈M_{\mathrm{min}}(F) &→&\displaystyle \bigcup_{n=1}^{\infty}A_n∈M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle σ(F)&=&M_{\mathrm{min}}(F) \end{array}
この結論が得られたので
これで「単調族定理」の証明は終わりになります。
(これを一般化した定理もあります)