|| そういえば順序ってそもそもなに?
『順序』が定義された「集合」のこと(そのまま)
中身(要素)のどれかに『順序』が定義できます。
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目次
・半順序集合「半順序の関係を持ってる集合」
・全順序集合「全順序の関係を持ってる集合」
・順序「前と後ろの区別がつくってこと」
反対称律「対称の時に、必ず同じになる関係」
完全律「確実に関係が成立するっていう保証」
前順序「最低限の関係しか満たしてない順序っぽい順序」
半順序「比較不能のケースはあっても直観的な順序」
全順序「全てのケースで比較が可能な順序」
数学にとって最も重要なことは
『比較できるかどうか』です。
その中でも「数字」は『大小の比較が可能』で
『違う』以外の比較基準が存在しています。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&≠&3 \\ \\ 0&<&3 \end{array}
で、これに関わってくる話が「順序」で
この『順序が定義できる』っていう性質を満たすとき
『便利な比較の基準が作れる』
まあだから、普段使う集合はそんな感じにしたい。
この記事で扱う話はそんな感じで、
集合で『順序』を表現するにはどうすれば?
みたいな話がメインになります。
半順序集合 Partially Ordered Set
|| 半ってか、部分?
ちょっと範囲の広い『順序集合』のこと。
一般性のある『順序集合』と言ってもいいかもしれません。
まあ要は「部分的に順序が分かる集合」のことで
そういう「順序集合」を『半順序集合』と呼んでるだけです。
そんな難しい話ではありません。
実際、これは『半順序関係』が定義されてる集合
まあつまり『順序を持った集合』のことでしかないので。
特殊なのは
この『半順序集合』上では「比較不能」な場合があり得る
という点で、それ以外は普通。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ¬(x≤y) &&∧&& ¬(x≥y) \end{array}
こういう風になる2要素の存在を認めてるだけです。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a&<&b&<&d \\ \\ a&<&c&<&d \end{array}
\begin{array}{lcl} \displaystyle b&?&c \end{array}
具体的にはこんな感じのことを認めます。
全順序集合 Totally Ordered Set
|| ちゃんとぜんぶ比較できる
『比較不能』な場合が無い「順序集合」のこと。
まあつまりよく使われる集合のことです。
「自然数」とか「実数」を表現するやつはこれ。
(N,≤)
記号だとこんな風に表されることがあります。
順序 Order
|| 前と後ろの区別がつく感じ
「集合の上で定義された『二項関係』」の中で
『比較ができる関係』から分かる「上下とか」のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle <&≤&∈&⊂ \end{array}
まあ要はこういう「関係から分かること」のことで
「先後・前後・上下」なんかは順序によって判断されます。
順序関係に関わる性質
「順序関係」に関わる性質は 2+2 つあります。
順序を考える上で必須なのが ↓
・推移律 ∀e_1,e_2,e_3∈S\,[\,(e_1Re_2∧e_2Re_3)⇒(e_1Re_3)\,]
・完全律 ∀e_1,e_2∈S\,[\,e_1Re_2∨e_2Re_1\,]
これに加えて同値関係( ≤,⊆ とか)を考える時
↓ が必要になります。
・反対称律 ∀e_1,e_2∈S\,[\,(e_1Re_2∧e_2Re_1)⇒(e_1=e_2)\,]
・反射律 ∀e∈S\,[\,eRe\,]
「反射律」「推移律」の詳細は『関係』の記事で。
反対称関係 Antisymmetric Relation
|| ひっくり返しても成立するなら同じ
「違うなら違う」ってことを示す「関係」のこと。
『反対称』ですが「対称律」と同居できます(え?)
\begin{array}{llllll} \displaystyle a=b&∧&b=a &&⇒&& a=b \\ \\ a=b&&&&⇒&&b=a \end{array}
等号 = が広く知られてるせいであれですが、
それでもこれ、実はちゃんと『入れ替え』を否定していて
\begin{array}{llllll} a≠b&&⇒&&a≤b&∨&a≥b && 〇\\ \\ &&⇒&&a≤b&∧&a≥b &&× \\ \\ \\ \displaystyle a≠b&&⇒&&a<b&∨&a>b &&〇 \\ \\ &&⇒&&a<b&∧&a>b &&× \end{array}
「対称律」を成立させない
みたいな用途で使うことができます( = 以外で)
\begin{array}{llllll} \displaystyle a<b&&⇒&&b<a &&× \\ \\ a∈b &&⇒&&b∈a &&× \\ \\ a⊂b &&⇒&&b⊂a &&× \end{array}
実際、反対称律を持つ関係は対称律をほぼ持ちません。
= が有名過ぎて実感し辛いかもですが、
こう見ると、確かに「反対称」という感じがしませんか?
完全関係 Total Relation
|| 全部で関係が成立する感じ
『全部の要素で成立する関係』のこと。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e_1,e_2∈S&\Bigl[ e_1Re_2∨e_2Re_1 \Bigr] \end{array}
要素が2つあって
その時『 e_1Re_2 』か『 e_2Re_1 』が必ず成立する
こういう時にその関係は完全だ、と言います。
順序だと「全順序」で使う感じですね。
もっと弱い「半順序」とかは満たしません。
前順序 Preorder
|| 前と全で発音するときややこしい
「反射律」と「推移律」だけ満たす「順序関係」のこと。
これは『同値関係を考える』場合の話で、
これに「対称律」が加わると『同値関係』になります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle <&∈&⊂ \end{array}
『順序』については「推移律」だけ満たす感じですね。
なので縛りが弱すぎてあんま実用的じゃないです。
だいたい「反対称律」を満たしちゃうので。
ちなみに読みですが、
正しくは「ぜんじゅんじょ」なんですけど
自分は「まえじゅんじょ」って呼んでます。
半順序 Partial Order
|| 部分的に順序があるよーって感じ
「完全律」を満たすわけではない「順序関係」のこと。
「推移律」「反対称律」「反射律」を満たします。
\begin{array}{llllll} \displaystyle <&∈&⊂ \end{array}
まあつまり ↑ のは「半順序関係」じゃありません。
これもまあ順序関係と言えばそんな感じもしますが
「半順序」と呼ばれるものは
↓ のみたいに「反射律」も満たす場合だけです。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ≤&⊆ \end{array}
ちなみに実用レベルの集合と関係はだいたいこれ。
全順序 Total Order
|| 数字を扱う時に使うやつ
「半順序」の中でも『比較できないものが無い』もの。
「順序」って言ったらだいたいこれですね。
\begin{array}{llllll} \displaystyle n∈N \\ \\ &n_1≤n_2&∨&n_2≤n_1 \end{array}
これは「集合」に制約がかかります。
全ての要素が全ての要素と比較できる
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e_1,e_2∈S &\Bigl[ e_1Re_2∨e_2Re_1 \Bigr] \end{array}
「完全律」はこの条件を満たす要素だけでできた
そういう特別な集合の上でしか成立しないので。
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0≤1≤2≤3≤4<5≤6≤...≤n≤... \end{array}
ちなみにこれはこんな感じに『線型』になるので
『線型順序 Linear Order』なんて呼ばれることもあります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle ∀e,e∈S &\Bigl[ eRe∨eRe \Bigr] \\ \\ \displaystyle ∀e∈S &\Bigl[ eRe \Bigr] \end{array}
また完全律から
「 e_1≠e_2 」の制限は無いのでこれが導けますから
自動的に「反射律」も満たすことになります。
狭義全順序
順序を表現可能なものは ≤,⊆ に限らず
\begin{array}{llllll} \displaystyle <&⊂&∈ \end{array}
こういったものもかなり実用的です。
なのでこういうのも含めて全順序と言いたいですよね。
\begin{array}{llllll} \displaystyle a<b&:=&\Bigl( a≤b ∧a≠b \Bigr) \end{array}
これはまあそんな感じの話で、
↑ みたいに記号の条件を定めることでこれを実現。
そうしてできた順序が「狭義全順序」で
これは全順序よりも具体的なものになります。
以上、『順序』に関してはこんな感じ。