|| 数学を説明するために必要になるやつ
これは『数学の基礎』にあたるものになります。
これに結びつけられないものは基本的に無いと思ってOK
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主な役割は、
『集合』と『写像』という概念を「数学」に与えること。
ただそれだけで、
単体で見ると特に意味はありません。
これだけ見ても、だからなに?って感じになると思います。
というのも、
これは「アルファベット」と「文法」みたいな感じで、
実際にどう使われるかはまた別の話になるので。
目次
・集合「なんか中身が入ってる枠みたいな感じのやつ」
元(要素)「集合の中身にあるなにかのこと」
空集合「中身が無い集合のこと(空っぽの箱みたいな)」
外延的記法「中身を全部指定する、定義のやり方の一つ」
内包的記法「条件に当てはまるかで判断する、定義法の一つ」
帰属関係「集合と要素の間にある関係の名前」
部分集合「集合の一部を切り取った集合のこと」
・写像「集合と集合の間に作れる結びつきのこと」
関係「集合の中身同士の結びつきのこと」
定義域(始域)「矢印の手前にある集合のこと」
値域(終域)「矢印の先にある集合のこと」
逆像「終域と逆写像から得られる像」
・公理的集合論「今のところ矛盾の無い集合論」
「濃度(基数)」「順序」といった概念がありますが、
これについては長くなるので別の記事で扱います。
集合 Set
|| 中身が入ってる枠(輪っかみたいなイメージ)
これは「数学」に「視覚的なイメージ」を与えるもので、
主に『概念』を視覚化する時に使われます。
具体的には、
「なにか」を『なにかの集まり』として、
「輪っか・箱」みたいにイメージする感じで。
\begin{array}{lllllll} \displaystyle \mathrm{element}&∈&\mathrm{Set} \\ \\ \\ \mathrm{Apple}&∈&\mathrm{Fruit} \\ \\ \mathrm{a,b,c}&∈&\mathrm{list} \end{array}
まあ要はあれです。
「りんご」を「甘い・酸っぱい・丸い・赤い」とか
なんかこんな感じだと思ってればだいたいそんな感じ。
集合が持つ制約
「集合」は↑で話したみたいな感じなんですが、
実はこれ、ある一つの制約がない場合だと
ある矛盾が生じてしまいます。
\begin{array}{lllllll} \displaystyle \mathrm{Class} &=& \{ x \mid x \notin x \} \end{array}
これを「ラッセルのパラドックス」なんて言うんですけど、
まあ詳しくは長くなるので別記事で扱うとして、
ともかく、こういう矛盾が生じるので、
『中身が確実に分かる』なんて制約が集合にはかかっていて、
↑で書いたような集合は集合とは呼ばれません。
\begin{array}{llllll} \{ x \mid x \notin x \} \\ \\ \displaystyle \mathrm{Ordinal \,\, Number} \end{array}
こういう『集合っぽいけどよく分からないもの』は
「クラス(類)」と呼ばれます。
って、こんなこと言われてもって話だとは思いますが、
とりあえず、そういうのがあるんだ
程度に思っておけばこの時点では十分です。
元・要素 Element
|| 集合の中身にあるやつ
『集合』の「中身」のことをこんな風に呼ぶことがあります。
定義は相対的な感じで、
「動物」の『中に含まれる』「人間」って関係で見るなら、
「動物」から見て「人間」は要素である、みたいになります。
『集合』を「 S 」として
『元・要素』を「 e 」とするなら
e∈S
記号で表す場合はこう。
見慣れないせいで難しく見えるかもしれませんが、
言ってる内容は簡単なので身構えないでください。
ちなみに「要素」と呼ぶか「元」と呼ぶかは好みです。
自分は「要素」の方が意味が分かり易いので好きですが、
文字数の関係か「元」と言われることが多い気がしますね。
帰属関係 Membership
|| 集合と要素の間にある関係の名前
↓の記号を意訳すると、
e∈S
「 e は S に属する」
「 e は S の要素 (元) である 」
こんな感じになります。
↑で紹介した通り、
これは「集合」と「要素」っていう
『集合論の核』である二つを繋ぐもの。
この『関係』に特別に名前が与えられているのはそれが理由で、
それ以上でもそれ以下でもありません。
で、その名前ってのが「帰属関係」なんですけど、
まあこれ自体はそんな重要じゃないです。
大事なのは「集合」と「要素」の『関係』
この感覚の方で、記号はこれを表現するための1手段。
∈
これの名前が「帰属関係」であること
それ自体には特に意味は無いので、
ここでは『 ∈ が表現したい感覚』を優先して覚えてください。
外延的記法 Extension
|| 中身を全部書くゴリ押し決定法
『集合』の「中身(元・要素)」を『定義』する方法の1つ。
やり方は単純で、単に「中身」をそのまま書き出すだけ。
\begin{array}{llllllllll} \displaystyle S&=&\{e_1,e_2,e_3,...,e_n \} \\ \\ \\ あ行&=&\{あ,い,う,え,お\} \\ \\ いくつかの顔文字&=&\{\text{( ゚Д゚),(´Д`),(;゚Д゚)}\} \end{array}
やってることは『具体化』です。
数値以外を使うときによく使われます。
内包的記法 Intension
|| 条件だけ書く横着なやり方
『集合』の「中身(元・要素)」を『定義』する方法の1つ。
「条件」を満たすものだよ、って感じで中身を特定。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle S&=&\{ x∈U \mid P(x) \} \\ \\ 集合&=&\{ x \, の範囲 \mid x \, の条件 \} \\ \\ \\ N&=&\{x∈U \mid x ∈N \} \\ \\ N&=&\{x∈\mathrm{Number} \mid x \, \mathrm{is\,Natural\,number} \} \\ \\ N&=&\{ x \, は数 \mid x \,は自然数 \} \end{array}
やってることは『抽象化』です。
すごいずぼらな感じのやり方ですが、
使われるのはだいたいこっちだと思っておいてください。
空集合 Empty Set
|| 空っぽの箱
ある『集合』が「要素を持たない(中身が無い)」時
その『集合』のことを「空集合」と言います。
\begin{array}{llllllllll} \displaystyle S_{\mathrm{empty}}&=&\{\} \\ \\ &=&∅ \end{array}
記号ではこんな感じ。
かなり、というか超重要なので覚えておきましょう。
部分集合 Subset
|| 集合の一部
ある『集合』の『一部の集合』のことを
こんな風に呼ぶことがあります。
「部分」の由来はそのまま
単に「元の一部」からきてます。
\begin{array}{llllll} \displaystyle s&⊂&S \\ \\ \{a,b\}&⊂&\{a,b,c,d,e\} \end{array}
要はまあこんな感じなんですけど、
この「一部である」ことを厳密に言うなら↓みたいな感じで、
「元(Original の方)となる集合」の要素だけを持つ
形式的には↓みたいな。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle P(x)&≡&∀x\,(x∈s→x∈S) \end{array}
まあこんな感じで表現されます。
ちなみにこれの意訳は↓です。
s の要素であるということは
S の要素でもある
包含関係
「集合」と「その集合の部分集合」にある
「関係」のことを『包含関係』と言います。
\begin{array}{llllll} \displaystyle s&⊆&S \\ \\ s&⊂&S \\ \\ \\ \{あ,い\}&⊂&\{あ,い,う,え,お\} \end{array}
記号ではまあこんな感じ。
見たままですね。
論理包含と包含関係
「命題記号」の「論理包含」は、
「集合論」の「包含関係」とは少々趣が異なります。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle A→B&≠&A⊃B \end{array}
というのも「論理包含」は
『妥当性』を元に『全体』を含めて定義されていて、
\begin{array}{llllllll} \displaystyle A→B&≡&¬A∪B \end{array}
一つの集合だけで完結しません。
\begin{array}{rlc} \displaystyle B \setminus A \end{array}
↑の範囲を含めて扱うことができます。
包含関係の感覚
この関係、実は日常的によく使えます。
というのも、これは「~の~」とか「~な~」の
いわゆる「 \mathrm{of} 」の『意味』を持っていて、
\begin{array}{llllllll} \displaystyle 生き物&⊃&身近な生き物 \\ \\ 生き物&⊃&その辺の生き物 \end{array}
まあこんな感じなわけですから、
こういった言語を視覚化することが可能に。
結果として、
これを理解しているだけで「言葉の意味が見える」ので、
少し意識しているだけで変な誤解をしなくなったりします。
帰属関係と包含関係
|| ややこしい2つ
この二つの「違い」について見ていきます。
割と深刻な話題なので、これも確実に覚えておきましょう。
というわけで説明していくわけですが、
まずきちんと断言しておくと、この二つは「違うもの」です。
同じようなものでも似たようなものでもありません。
まったくの別物です。
\begin{array}{llllllll} \displaystyle S&=&\{s\} \\ \\ s&=&\{a\} \\ \\ &&& s&∈&S&〇 \\ \\ &&& s&⊂&S&× \\ \\ \\ S&=&\{あ,い,う\} \\ \\ s&=&\{あ,い\} \\ \\ &&& s&∈&S&× \\ \\ &&& s&⊂&S&〇 \\ \\ \\ S&=&\{a,\{a\}\} \\ \\ s&=&\{a\} \\ \\ &&& s&∈&S&〇 \\ \\ &&& s&⊂&S&〇 \end{array}
たぶん、具体例で比較すると分かりやすいと思います。
s∈S は「集合 s が集合 S の要素である」
s⊂S は「集合 s が集合 S の一部の要素を持つ」
ってことを示す記号です。
なのでまあ、こんな感じになります。
常に両方が成立するわけではありません。
集合の集まり(集合族)
この2つを区別できていないと、
『集合』を「要素」として持つような『集まり』
というものを理解しようとしたときに変な感じになります。
というのも、自分が体験した勘違いの一例ですが、
「『要素である集合』の『要素』」を、
\begin{array}{llllllll} \displaystyle A∈B∈C&→&A∈C \end{array}
そのまま「『その集合を持つ集合』の要素」として扱える、と
最初に見た時、勘違いしてしまったことがありました。
(ほとんどの場合扱えません)
推移律
『要素』と『集合』の区別がついていなかった
ってのが理由としては大きいんでしょうけど、
そのせいで「推移関係」を前提にしてしまった、と。
\begin{array}{lllllll} \displaystyle A⊂B⊂C&→&A⊂C&&〇 \\ \\ A∈B∈C&→&A∈C &&△ \\ \\ \\ \\ A∈2^A∈2^{2^A}&→&A∈ 2^{2^A} &&〇 \end{array}
付け加えるなら、
やろうと思えば『推移関係を作れる』上に、
『推移関係があるものをよく利用する』ため、
\begin{array}{llllllll} \displaystyle 0&:=&\{\} \\ \\ 1&:=&\{ \,\, \{\},\{\{\}\} \,\, \} \\ \\ 2&:=&\{ \,\, \{\},\{\{\}\}, \{ \{\{\}\} \} , \{\{\},\{\{\}\}\} \,\, \} \end{array}
\begin{array}{llllll} \displaystyle 0&∈&2 \\ \\ 0&<&2 \end{array}
結果として、本当は前提じゃないのに前提にしてしまった。
その結果としてこの勘違いは生まれたんだと思います。
写像 Mapping
|| 像に写らせるやつ
2つの集まりの「対応 f 」のこと。
\begin{array}{lllll} \displaystyle f&:& \mathrm{Source} &→& \mathrm{Target} \end{array}
要は「元(要素)」同士の『対応』のことで、
「あれはこれになる」っていう『決まりの集まり』
それが『写像』の正体になります。
直観的には「フィルター」のようなものと思って良いです。
砂利の塊(集合)を落とすと
ある場所(集合)に落ちる、みたいな。
こういう「フィルター全般」を
数学では『写像』なんて呼んだりするんですね。
関係 Relation
|| あれとそれは~です
「元・要素」同士の『対応の仕方』のこと。
言い換えるなら『どんな風に対応してるか』を表すのがこれ。
例えば「関係 \mathrm{R} 」には↓みたいなものがあって、
\begin{array}{llllllll} a&\mathrm{R}&b && \mathrm{R}(a,b) \\ \\ \displaystyle a&=&b && =(a,b)\\ \\ a&>&b && >(a,b) \\ \\ A&⊂&B && ⊂ (A,B) \end{array}
見たまま、要素同士を『比較するとどうなのか』
記号で表現されています。
基本は『 aRb 』みたいな「2項関係」が一般的ですね。
3項以上の関係もだいたいこれに分解できますし、
なにより2項関係より多いやつは扱いにくいので。
R(a_1,a_2,...,a_n)
一応、こういう感じの n 項関係はあるにはあるんですけど、
なにかを上から抑えるために必要な時とか、
そういう時にしか見ません。
域・始域・定義域 Domain
|| あれからこれへ、のあれの方
「写る前」( → の左)の集合です。
あんま見ませんが「始集合」なんて呼ばれることもあります。
あんま使いませんが、知らないと、
必要な時とか文献とか読んでる時とかに
はい? ってなっちゃうことがあるんで覚えときましょう。
値域 Range
|| あれからこれへ、のこれの方全般
「終域」とか「像」とかのこと。
要は「写る先」( → の右)のことですね。
だいたいは「像」の意味で使われますが、
文献によっては「終域」の意味で使われることもあります。
↓のも含めて「定義域」とセットで覚えた方が良いです。
「定義域」を矢印 → の「左のやつ」
「値域(像・終域)」は矢印の「右のやつ」という感じで
終域 Codomain
これは、なんでも良い「選べる集合」のこと。
「 → 」の右のやつです。
「写像を定義する段階」で指定されるので、
基本的には任意(なんでも良い)。
像 Image
これは「 → 」の左の「集合」から、
「写像」によって得られた「集合」のこと。
つまるところ
「定義域(集合)」とその「写像」
この2つによって決定されたもの(集合)のことですね。
「終域」とは異なり、
これは好きに指定できるものではありません。
\begin{array}{lllll} \displaystyle f&:& A &→& B \end{array}
こうであれば、
「像」は B ではなく f(A) のことを指します。
ちなみにこの時、 B は「終域」です。
比較
『像』『値域』『終域』の3つの違いは、
形式的に見てみるとはっきりします。
『像 \mathrm{Image} 』は f(A)=\{f(a) \mid a∈A\}
『終域 \mathrm{CoDomain} 』は f(A) を含んだ集合 B
『値域 \mathrm{Range} 』はこのどちらともを指す
以上のことから「 f(A) 」は
必ずしも「 B と完全に一致する」とは限らないので、
\begin{array}{lllll} \displaystyle \mathrm{Image}(f)&⊆&\mathrm{CoDomain}(f) \end{array}
「値域」に関しては、
「終域」として捉えるなら \mathrm{Image}(f)⊆\mathrm{Range}(f)
「像」として捉えるなら \mathrm{Range}(f)⊆\mathrm{CoDomain}(f)
まとめると、これらは↓みたいな関係になります。
\begin{array}{llllll} \displaystyle \mathrm{Image}(f)&⊆&\mathrm{Range}(f)&⊆&\mathrm{CoDomain}(f) \end{array}
ややこしいですけど、
たまに区別する必要があるのでなんとなく覚えておきましょう。
逆像 Inverse Image
これは「定義域のどこか」を指す単語です。
「定義域」とは『決まる順番』が異なります。
というのも、
「定義域」は『写像が定義される段階』で決まりますが、
「逆像」は『写像が決まってから』決まるもので、
\begin{array}{llllllll} \displaystyle f&:&A&→&B \\ \\ f^{-1}&:&A&←&B \end{array}
「終域」と「像」同様の理由で、
「逆像 f^{-1}(B) 」は『定義域 A 』とは区別されます。
まあなので、ある程度は定義域と一致しますが、
確実に一致するとは限りません。
意味のある写像
「単射」「全射」「全単射」の詳細は別記事で。
ここではざっくりとした紹介に留めておきます。
・単射
「定義域」の要素を、
『被りがなく』『全て』紐づけることができてる写像
・全射
「定義域の全て」が「終域の全て」に紐づいている
つまり f(A)=B になる写像
・全単射
「定義域の要素」が「終域の要素」に
『被りなく』『全て』紐づいている写像
つまり全部の要素で a≠b\,→\,f(a)≠f(b) が成立する写像
公理的集合論 Axiomatic Set Theory
|| 間違い(矛盾)が見つかってない集合論
『集合論』から得られた「公理の集まり」のこと。
この得られた「公理の集まり」が、
「数学」のあらゆる成果の基礎になります。
全部で「 11 個」あるんですけど、
詳細は長くなるので別の記事で。
ここではざっくりとした紹介だけ行います。
11 (1+2+2+2+4) 個の公理
まず大分類なんですけど、
基本は「決まり」と「やれること」
それぞれ 1+2+2+2 個と 4 個あって、
まず大前提として「 \mathrm{Identity} 」(集合の存在)が。
採用されない場合があるものが「 2 」つあって、
範囲の限界「 \mathrm{Inaccessible\,Cardinal} 」(到達不能基数)
その範囲内でのみ適用可能な「 \mathrm{Choice} 」(選択・選ぶ)
これで 1+2 つ
続いて『定義のやり方』が 2 つで、
要素を記述する「 \mathrm{Extension} 」(外延)と
論理式で条件を記述する「 \mathrm{Intension} 」(内包)が
『基本的な性質』を表すものも 2 つあって、
正則性、包含、推移関係、比較できる「 \mathrm{Foundation} 」(基礎)
有限に収まらない「 \mathrm{Infinity} 」(無限)が
計 2+2 つあります。
で、残りは『操作』の 4 つで、
入れ替えできる「 \mathrm{Permutation} 」(代入・置換)
両方含んでるものがある「 \mathrm{Union} 」(和集合)
セットを作れる「 \mathrm{Pair} 」(直積・対)
部分集合を網羅した集まり「 \mathrm{Power\,Set} 」(冪集合)
こういうのが。
以上、計 11 個が
「公理的集合論」の大まかな全体像になります。