|| 人間が扱いやすい単位の基礎
名前は厳ついのであれですけど、
これは「基本的な 7 つの単位」の総称です。
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目次
知っておくべきこと
国際単位系「基礎的な単位」
物理量「あるいは単に量と言われるもの」
メートル「成人男性の腰の高さくらいの長さ」
秒「秒刻みの時計を見れば分かる」
グラム「1円硬貨が 1\mathrm{g} /水 1\mathrm{L} が 1\mathrm{kg} くらい」
ケルビン「温度を表す単位 約 0℃ が 273\mathrm{K} 」
ニュートン「 1\mathrm{N} は、1\mathrm{kg} のものに 1\mathrm{m}/\mathrm{s}^2 を与える」
ジュール「 1\mathrm{J} は、1\mathrm{N} で 1\mathrm{m} 動かすのに必要な力」
国際単位系 SI
|| あらゆる単位の基礎になる単位
全部で「 7 つ」ある必要最低限の単位の総称がこれ。
誰でも知ってるものが「 4 つ」で、
あまり知られてないのが「 3 つ」あります。
誰でも知ってるやつは、
「 \mathrm{s} (秒)」「 \mathrm{m} 」「 \mathrm{kg} 」「 \mathrm{K} (約 -273℃ )」
以上の4つですね。よく見ると思います。
他のやつはあまり知られてないやつなんですけど、
これの内、 2 つは見覚えがあるはずです。
アボガドロ定数 \mathrm{N_A} を単位に原子数を定めた「 \mathrm{mol} 」
電流の単位となる「 \mathrm{A} (アンペア)」
この2つなんですけど、
「原子の量」とか「電気」とか
こういうのの話で目にした覚えがあるかと。
で最後、残る1つなんですけど、
これは見覚えのある人は少ないと思います。
というのも、
「 \mathrm{cd} (カンデラ)」ってやつなんですけど、
これの意味、分かりますか?
『人が感じる明るさ』
というのを意味している単位なんですけど、
まあ触れる機会が超少ないので、
分かるわけないですよね。
ちなみに「ろうそく1本分の明るさ」が
「 1\mathrm{cd} 」が表す明るさです。
まとめると、
\mathrm{SI} の 4+2+1 個の単位ってのは↓になります。
\begin{array}{cccccccc} \displaystyle \mathrm{s}&&\mathrm{m}&&\mathrm{kg}&&\mathrm{K} \\ \\ \mathrm{mol}&&\mathrm{A} \\ \\ \mathrm{cd} \end{array}
覚えるべきは実質3つなので、
特に疑問も無く覚えられると思います。
※注意
「カンデラ」が表す量は
天文学の「光度」とは別です。
物理量
|| 単位とかがはっきりしてる量のこと
「量」って言えるやつはだいたいこれ。
そこそこ見る割に意味がちょっと曖昧な単語です。
なので少し厳密に、軽く解説しておきます。
まず具体例から話しておくと、
「 \mathrm{m} (長さ)」「 1\mathrm{kg} (重さ)」
「 2\mathrm{m}/\mathrm{s} (速度)」などなど、
こういうのを「物理量」
あるいは単に「量」って言うんですよ。
範囲が広い抽象的な単語なので、
「力」のことを物理量と言うこともあれば、
「力の大きさ」を物理量と呼ぶこともあって、
例えば「 \mathrm{m} 」も「 1\mathrm{m} 」も、
どちらも物理量と呼ぶことがあります。
ただ、この辺りはちょっとややこしくて、
というのも、「 1\mathrm{m} 」の場合とかで、
この「長さ(物理量の 1 つ)」の「 1 」に対しては、
「物理量の大きさ」
なんて言い回しが使われることがあるんです。
まあつまりこの場合だと
「 \mathrm{m} 」は「物理量」と呼べますが、
その「大きさ 1 」は物理量じゃない
みたいな感じになります。
ただこの辺り、どうも筆者の匙加減になりがちで、
区別されないこともわりと多く、
「大きさ」も物理量と言うことがありますね。
まあ要は「物理量」という言葉の意味は、
『文脈』によって判断しなければならないわけで、
だいたい「なんらかの量」を指して使われますが、
「量それ自体」か「量の中身と全体」か
この辺りは文脈で判断するしかありません。
ややこしいですが、
まあ『国際単位系で表されてる比較できるもの』と、
こう覚えておけば、だいたい大丈夫だと思われます。
誰でも知ってる単位
|| 常識っぽいようで詳細はあまり知られてない
ここでは「秒・長さ・重さ・温度」について、
より詳しく厳密な話をしていきます。
とはいえまあ、これ、皆さん知ってますよね。
「秒」「長さ」「温度」とかは日常で見ますし、
なんとなーく感覚で分かると思います。
ただ、なんとなく分かるとは思うんですけど、
「厳密に」どう定められているのか。
なにが基準になっているのか。
この辺りはよく分からないと思います。
現代では、それでも特に問題は無いでしょう。
だいたい分かればそれで十分です。
気にする必要もありません。
ただ、例えば「正確な値が知りたい」時、
「できるだけ誤差を無くしたい」時、
「なんとなく」じゃ困りますよね?
それこそ、
例えば厳密な測定ができないとなると、
1\mathrm{s}≒1.2\mathrm{s} とか
1\mathrm{m} ≒1.1\mathrm{m} とか
40 万円 ≒ 41 万円とか
こういう雑な近似が平気で起きるわけで、
時に均等な分配なんかができなくなったりします。
とまあそういうわけですから、
厳密な定義は必要なんですよ。
長さ・メートル \mathrm{meter} (\mathrm{m})
こいつは『光の速度』で厳密に定義されてます。
由来は相対性理論の『光速度不変の原理』です。
\begin{array}{rlc} \displaystyle c&=299\,792\,458\mathrm{m}/\mathrm{s} \\ \\ 1\mathrm{m}&\displaystyle =\frac{c}{299\,792\,458}1\mathrm{s} \end{array}
m の由来は古代ギリシャ語の
「ものさし」を意味する \mathrm{μέτρον} (メトロン)
『 c が真空中の光速度』で、
「 299\,792\,458\mathrm{m}/\mathrm{s} 」の値が不変になります。
ちなみに「光速度 c の由来」は、
ラテン語の「速度」を意味する単語「 \mathrm{celeritas} 」です。
\begin{array}{rlc} 1\mathrm{m}&\displaystyle =\frac{c}{299\,792\,458}1\mathrm{s} \end{array}
はい。とまあそんな感じで、
この光速度不変の原理を元にして、
長さ 1\mathrm{m} は定義されています。
とりあえずこれは、
まずだいたい「秒速 30 万 \mathrm{km} だ」と覚えましょう。
速すぎて実感できませんが、
「地球を 1\mathrm{s} で 7 周半」とか、
「月まで 1.3\mathrm{s} 未満」とか、
こういう基準があるので、
ぼやっと覚えておけば、
とりあえずとんでもなく速いことが実感できると思います。
んで見ての通り、
これは『秒』の定義に依存していて、
順番的には『秒』→『長さ』で定義されています。
\begin{array}{rlc} \displaystyle 1\mathrm{m}=\frac{c}{299\,792\,458}1\mathrm{s} \end{array}
具体的には、
例えば「 1・10^{-6}\mathrm{s} で光が移動した距離」を記録して、
それをだいたい「 300\mathrm{m} 」とする、という感じで。
時間・秒 \mathrm{second}(\mathrm{s})
これは『セシウム 133 で作れる周波数』という
よく分からんやつで定義されています。
もともとは「地球の自転(1日)」から定義されていて、
その後に「公転(1年)」から定義されていたんですが、
まあこれじゃ『正確に』となると微妙なので、
現在では、この「原子の周波数」が採用されてる感じです。
周波数っていうのは、
要は『マイクロ波の周波数』なんですが、
この辺り、だいぶ込み入っているので
簡単にはちょっと説明し辛いですね。
まあざっくり説明するなら、
要は「ある周波数 Δν_{\mathrm{Cs}}\,\,\mathrm{Hz} 」を作ることができて、
それが『秒間に Δν_{\mathrm{Cs}} 回の振動をしているとする』
というような感じで、
\begin{array}{rlc} \displaystyle Δν_{\mathrm{Cs}}×1s =9\,192\,631\,770\mathrm{回} \end{array}
この「 Δν_{\mathrm{Cs}} 」の具体的な数値を
「 9\,192\,631\,770 」ということにして
単位「秒」を定義している、と。
まあざっくりとはそんな感じです。
光速度もまたそうですが、
この「 9\,192\,631\,770 」ってのが、
人間にとって良い感じになる値になります。
これは「原子に合う特定の波の大きさ」が『一定』で、
『ほとんどブレない』から基準とされていて、
『人間の体感的な 1 秒に近い形』を求める際、
この周波数はこんな感じの値になるんですね。
周波数の計測
ちょっと専門的な話になりますが、
これは「原子の性質」を使って求められます。
\begin{array}{rlc} \displaystyle ν&\displaystyle =cR_{\infty}\left( \frac{1}{(m+a)^2}-\frac{1}{(n+b)^2} \right) &&(m≤n)\\ \\ E&=hν \\ \\ \\ R_{\infty}&=1.0973731568160(±21) ×10^7 \mathrm{m}^{-1} \\ \\ h&=6.62607015×10^{−34} \mathrm{J・s} \end{array}
(±21) は下2桁の誤差
使うのは「原子のスペクトル」と
「励起状態への変化」の2つです。
軽く説明しておくと、
要は「原子には色がある」って話がスペクトルの話で、
a,b は原子ごとの定数になります。
m,n は電子殻の番号です。
1 が基底状態(一番原子核に近い)
そして「励起状態」っていうのは、
「より活発な動きをする原子の状態」のこと。
数式的には n=1 より大きい状態で、
n≥2 で励起状態になります。
ちなみに可視光領域(バルマー系列)だと m=2 ですね。
この場合、基底状態 n=1 はとりません。
まあつまり、
「決まった周波数の電磁波を吸収する」ことと、
「状態が変わるのに必要なエネルギー」の話で、
その時に『出てくる電磁波の周波数』を使って、
「 1\mathrm{s} としたい振動回数」を求めてる感じ。
ちなみに「周波数」と「振動数」は同じものです。
使い分けの基準は正直よく分かりません。
なので、同じだということを覚えておきましょう。
電磁波の周波数
光子にしても電子にしても、
その正体は『特定の周波数を持つ電磁波』です。
逆を言えば、
『周波数を特定することができる』なら、
『それがなんなのか』特定できます。
セシウム133の周波数も同様で、
『セシウムに当てた電磁波』が
『セシウムを励起状態にした』のなら、
その「電磁波の周波数」は
『セシウムに合う周波数』だと特定できます。
特に『秒間での周波数を調整できる装置』があれば、
その『調整された周波数』を使って、
『セシウムに合う周波数』に合わせることができて、
それがまあ、要は『共鳴周波数』なんですね。
んで、秒間に「 9\,192\,631\,770 (約92憶)回の振動」
というのがセシウムに合う周波数なので、
結果的に、この値が「秒」を定義しました。
まとめると、
『とある振動数の電磁波を作れる』ことから、
その『振動数を使って「秒」を定義する』という流れです。
別の言い方をするなら、
まず「ある程度正確な 1 秒という枠」があって、
それを『セシウムの周波数でズラさない』感じ。
なぜセシウム 133 を使うかと言うと、
現状では、これが最も誤差が少ないから。
それ以上の意味はありません。
当然、他の原子でも作ることは可能です。
ちなみに、セシウムの場合の正確さは、
セシウムの原子時計は「 3000 万年に 1 秒」しかズレない程度です。
超すごいですね。
マイクロ波の生成方法や振動数の計測法については、
ここでは長くなり過ぎるので省略します。
興味がある方は『原子時計 作り方』
みたいな感じで調べてみてください。
重さ・グラム \mathrm{gram} (\mathrm{g})
実感しやすいので、
基本は「 \mathrm{kg}(=1000\mathrm{g}) 」で表されます。
「水 1\mathrm{L} 」がだいたい「 1\mathrm{kg} 」です。
厳密な定義についてはわりと込み入っていまして、
先に順序だけ説明しておくと、
『秒』→『長さ』→(速度→エネルギー)→『重さ』
という順で定義されています。
説明が回りくどくなってしまうんですが、
これの厳密な定義は回りくどく説明しないと、
なんか、ちょっとよくわかりません。
というのも、これは『プランク定数 h 』で定義されていて、
\displaystyle 1\mathrm{kg}=\frac{h}{6.62607015・10^{-34}}・1\mathrm{s}・\frac{1}{(1\mathrm{m})^2}
とすると導出できます。
これが厳密な定義です。
しかしこれ、分かりやすいですか?
私はすごく分かり難いと思います。
プランク定数
そもそも「プランク定数」って?
って感じだと思うので、そこを説明していくと、
一言で言うなら、
これは『光子のエネルギーを定める定数』のことです。
って言われても、なんかよく分からんと思いますが、
まあそれは仕方なくて、
これを理解するには、
「エネルギー E は、振動数 ν に比例する」っていう、
『 E=hν 』という物理法則を知っておかないといけません。
詳しくは『光量子仮説』
「光電効果」「コンプトン効果」を知っておく必要があって、
この実験結果から、この物理法則は正しいとされています。
とまあ見ての通り、
これ、知らないと分かるはずがありません。
つまり分からないのは自然なことなので、
あまり身構えないようにしてください。
理解したいなら、ここは覚えるしかない部分です。
んでまあ、この「プランク定数」なんですが、
これは計測によって得られた値でして、
具体的には『 6.62607015・10^{-34}\,\mathrm{J・s} 』
という値で定義されています。
単位についてはただの結果論で、
だいたい「 6.6・10^{-34} 」と覚えておけばOK。
覚え方については、
「 66+34=100 」みたいに覚えておくと、
ちょっと覚えやすいですね。
で、このプランク定数なんですけど、
この値の根拠は「光子エネルギーを測った結果」なので、
それ以上の根拠は無いと思っておいてください。
計測法の詳細は省きますが、
繰り返すと、これは『実際に測った結果』です。
なぜこの値かというのは「そうだったから」としか言えません。
感覚的には、自分の身長が ~\mathrm{cm} なのは、
『測った結果そうだったから』ですよね?
つまりはまあ、そういう感じです。
質量に関してはこんな感じですね。
まとめると、
「光子エネルギーの測定値」から得ています。
んで、
『秒』『メートル』『プランク定数』という「定数」から、
この「重さ \mathrm{kg} 」は、必然的に導けちゃうわけです。
\begin{array}{lllll} \displaystyle E=hν&⇒&E_{\mathrm{scalar}}\,\mathrm{J} \\ \\ &&=h_{\mathrm{scalar}}\,\mathrm{J・s}・ν_{\mathrm{scalar}}\mathrm{s}^{-1} \\ \\ \\ & ⇒&E_{\mathrm{scalar}}\,\mathrm{kg}・\mathrm{m}^2/\mathrm{s}^2 \\ \\ && =h_{\mathrm{scalar}}\,\mathrm{J・s}・ν_{\mathrm{scalar}}\mathrm{s}^{-1}\end{array}
振動数 ν が 1 の場合を考えて、
エネルギー E が『計測された』とすると、
\displaystyle \mathrm{kg}=\frac{h}{E_{\mathrm{scalar}}}・\frac{s}{\mathrm{m}^2}
E を含めて全てが定数値なので、
\mathrm{kg} の値は一定になる、という感じに。
これが「重さ」導出のざっとした流れになります。
なんか厳ついですが、やってることはただの方程式の計算。
よく見ると、特に難しくはありません。
温度・ケルビン \mathrm{kelvin} (\mathrm{K})
こいつは『絶対温度』とか言われてるやつの単位です。
「 0℃ 」が、だいたい「 -273\mathrm{K} 」になります。
これがたぶん一番実感しやすい \mathrm{K} の意味でしょう。
厳密な定義は \mathrm{kg} みたいな感じでして、
こいつの場合は『ボルツマン定数 k 』っていうのが使われてます。
具体的にはこんな↓ですね。
\begin{array}{rlc} \displaystyle \frac{1}{2}m\overline{v}^2&\displaystyle =\frac{3}{2}kT&&\displaystyle \left(∵k=\frac{R}{N_A}\right) \\ \\ \displaystyle T&\displaystyle =\frac{1}{3}\frac{1}{k}m\overline{v}^2 \end{array}
\begin{array}{rlc} \displaystyle \overline{v}^2&=v_x^2+v_y^2+v_z^2 \end{array}
ちょっとややこしいです。
これは『原子の運動量』を「温度」と解釈できることから、
統計的に導かれるものなんですが、
まあそれだけ言われてもって話ですよね。
というわけでざっと説明すると、
『秒』『長さ』『重さ』から、
運動法則・運動エネルギーが↓みたいに導けるので、
\displaystyle \frac{1}{2}mv^2
これを「温度」として、
「運動エネルギー」と「熱エネルギー」の等価性から、
\begin{array}{rlc} \displaystyle P&\displaystyle =\frac{Nm\overline{v}^2}{3V} \end{array}
『気体定数』『アボガドロ定数』が現れる関係式を得て、
\begin{array}{rlc} \displaystyle PV&=nRT \\ \\ \displaystyle \frac{Nm\overline{v}^2}{3V}V &=nRT \\ \\ \\ n&\displaystyle =\frac{N}{N_A} \\ \\ \\ N_A&=6.02×10^{23} \mathrm{mol}^{-1} \\ \\ R&=8.31 \, \mathrm{J}/\mathrm{mol}・\mathrm{K} \end{array}
結果的に「熱」が「速度」に比例することが分かって、
\begin{array}{rlc} \displaystyle \frac{1}{2}m\overline{v}^2&\displaystyle = \frac{3}{2}\frac{R}{N_A}T \end{array}
\displaystyle \frac{R}{N_A} =k
その『比例定数』が「ボルツマン定数」になる、という感じ。
ボルツマン定数
もうちょっとちゃんと説明すると、
↓のような関係式が、ボルツマン定数を導きます。
\begin{array}{rlc} \displaystyle \displaystyle N\frac{1}{2}m\overline{v}^2&\displaystyle =\frac{3}{2}nRT \\ \\ \displaystyle \frac{1}{2}m\overline{v}^2&\displaystyle =\frac{3}{2}\frac{R}{N_A}T\,\,\,\,\,\left(∵n=\frac{N}{N_A}\right) \end{array}
「 n はモル数」で、
「 N は原子数・分子数」です。
「 N_A がアボガドロ数」で、
これは「 6.02214076×10^{23} 個」の『原子・分子の数』
つまり 1\mathrm{mol} を表しています。
正直、なにがどうなってるのかよく分からんと思いますが、
これはしょうがないです。(特に 3 と R )
けっこう色々な知識が必要になるので。
具体的には、
主に「熱力学」の成果を多用していて、
「理想気体の状態方程式」がメインに。
PV=nRT
その過程で「統計」的な考え方も使っていて、
\begin{array}{llll} \displaystyle P&\displaystyle =\frac{Nf_{\mathrm{atom}}}{S} \end{array}
更にそのために幾何学の知識もまた使っています。
この場合、長さ L の立方体の体積が V です。
\begin{array}{rlc} \displaystyle \overline{v}^2&=v_x^2+v_y^2+v_z^2 \\ \\ V&=L^3 \\ \\ S&=L^2\end{array}
そして「圧力 P 」は『平面に対して』のものなので、
原子・分子1個の「運動」を考えてみると、
|\,\,←\,\,・
まず1つの壁にぶつかるとするなら、
原子・分子1個の衝突は、
mv_x
『完全弾性衝突であると仮定』し、
『原子・分子同士の衝突も考えない』なら、
「立方体の1つの面」に対して、こうなります。
mv_x-m(-v_x)
この時、反作用を考慮すると、
『完全弾性衝突と仮定されてる』ことから、
衝突後、速度は変わらず、方向が逆になるので、
2mv_x
壁はこの運動量を受けた、ということに。
で、衝突した原子は反対側にも衝突して、
また同じ壁に衝突しに向かうわけですから、
「また衝突するまで」に、
\displaystyle \frac{2L}{v_x}
これだけの時間が必要だということも分かります。
\displaystyle \frac{v_xt}{2L}
このことから、
「1秒間で1つの面にぶつかる回数」はこう。
つまり、『1つの壁が受ける力』は、
\begin{array}{rlc} \displaystyle 2mv_x \frac{v_xt}{2L} \end{array}
t 秒間でこれくらい。
そして更に『その方向の壁が受ける力の平均 \overline{f} 』を考えると、
\displaystyle\overline{f}t= \frac{mv_x^2}{L}t
こうなりますから、
整理して、『1方向の力の平均』が導かれます。
\displaystyle \overline{f}= \frac{mv_x^2}{L}
んで、これは「他の方向」でも言えることですから、
\begin{array}{rlc} \overline{f} &\displaystyle =\frac{mv_x^2}{L} \\ \\ \overline{f} &\displaystyle =\frac{mv_y^2}{L} \\ \\ \overline{f} &\displaystyle =\frac{mv_z^2}{L} \end{array}
立方体の中にある全ての原子で、
全方向、という範囲で考えてみると、
\begin{array}{llll} \displaystyle \overline{v}^2&=v_x^2+v_y^2+v_z^2 \\ \\ \displaystyle \frac{m \overline{v}^2 }{L} &\displaystyle = \frac{mv_x^2 }{L} +\frac{mv_y^2}{L} +\frac{mv_z^2}{L} \\ \\ \\ &= \overline{f} + \overline{f} + \overline{f} \end{array}
「気圧」は『上下左右に明らかな偏りは無い』ので、
全ての軸で圧力の平均は同じとみなせます。
3\overline{f} = \displaystyle \frac{m \overline{v}^2 }{L}
こうして
「1つの面が受ける」
「1つの原子による力」が導かれて、
\overline{f} = \displaystyle \frac{1}{3}\frac{m \overline{v}^2 }{L}
粒子の数が N 個だとすれば
\begin{array}{rlc} F& = N\overline{f} \\ \\ &= \displaystyle N\frac{1}{3}\frac{m \overline{v}^2 }{L} \end{array}
「1つの面が受ける力」はこうですから、
後は「圧力 P 」の定義を確認して、
「面積当たりの力」を求めると、
\begin{array}{rlc} \displaystyle P&\displaystyle =\frac{F}{L^2} \\ \\ & \displaystyle = N\frac{1}{3}\frac{m \overline{v}^2 }{L}\frac{1}{L^2} \\ \\ \\ & \displaystyle = N\frac{m \overline{v}^2 }{3L^3} \\ \\ & \displaystyle = N\frac{m \overline{v}^2 }{3V} \end{array}
結果このような、
『圧力と力の関係』が導かれます。
後は『アボガドロ定数』と
『理想気体の状態方程式』から、
\begin{array}{rlc} \displaystyle n&\displaystyle =\frac{N}{N_A} \\ \\ PV&\displaystyle =nRT \\ \\ \\ P& \displaystyle = N\frac{m \overline{v}^2 }{3V} \\ \\ PV&\displaystyle = N\frac{m \overline{v}^2 }{3V}V \\ \\ &\displaystyle = nRT \end{array}
\begin{array}{rlc} \displaystyle N\frac{m \overline{v}^2 }{3V}V&\displaystyle = nRT \\ \\ \displaystyle N\frac{m \overline{v}^2 }{3}&\displaystyle = \frac{N}{N_A}RT \\ \\ \\ \displaystyle m \overline{v}^2 &\displaystyle = 3\frac{R}{N_A}T \\ \\ \displaystyle \frac{1}{2} m \overline{v}^2 &\displaystyle = \frac{3}{2} \frac{R}{N_A}T \end{array}
簡単に式変形をすれば、この通り。
『運動エネルギー』と『熱』の関係を示す式が導かれて、
\begin{array}{rlc} \displaystyle \frac{R}{N_A} &=k \\ \\ \displaystyle \frac{1}{2} m \overline{v}^2 &\displaystyle = \frac{3}{2} kT \end{array}
その『運動と温度の関係』を表す指標として、
「ボルツマン係数」が定義できるわけですね。
エネルギーに関する単位
|| ものを動かす力
代表的なものは「ニュートン \mathrm{N} 」と「ジュール \mathrm{J} 」の 2 つで、
主役は「ジュール \mathrm{J}=\mathrm{m}・\mathrm{kg}・\mathrm{m}/\mathrm{s}^2 」ですね。
なんで主役かって話ですが、
これは「エネルギー」という名前のほかに、
『仕事』『熱量』『電気量』って名前もあるんですよ。
そう、つまりこれ、
物理学の「全ての分野」で出てくるんです。
まあ、なんせ『エネルギー』ですからね。さもありなん。
というわけで、
まずは「ニュートン \mathrm{N} 」から見ていって、
次に「ジュール \mathrm{J} 」を見ていきます。
ニュートン(\mathrm{N})
これは簡単には『速度を与える力』のことです。
こう覚える方が実感しやすいと思います。
厳密には「 1\mathrm{N} の定義」として、
『 1\mathrm{kg} の物体に、 1\mathrm{m}/\mathrm{s}^2 の加速度を生じさせる力』
と定義されてるわけですが、これ、ちょっと実感しにくいですよね?
ちなみに単位は「 \mathrm{N}=\mathrm{kg}・\mathrm{m}/\mathrm{s}^2 」です。
というわけで、
さっそくこれを実感しやすい形にしていくわけですが、
そのために、まずは「時間(秒)」を使ってみます。
なんでこうするかっていう話については、
「 0 秒」の時点を考えてみると、なんとなく分かると思います。
というのも、この「 1\mathrm{N} 」という力、
『 0 秒の地点では、なにもしていないように見える』んですよ。
そう、この「ニュートン」という力は、
『 1 つの時点だけ見てもよく分からん』もので、
実感するには、
最低でも「 3 つの時点」を見る必要があるんです。
具体的には「 0 秒の時点」
「 1 秒の時点」
「その中間の時点」
最低でもこの 3 箇所を見ないと、これは実感しにくいんです。
というわけでさっそく見ていくと、
まず「 1\mathrm{kg} の静止している物体」があって、
それに「右方向へ 1\mathrm{N} の力が加えられた」としましょうか。
で、これを 3 つの時点で見ていくわけですが、
まず「 0 秒の時点」だと、
実は何も変化は見られません。
少なくとも「見た目」の上では、という注釈はつきますが、
本当に、この時点じゃ何も変化がありません。
しかし「 1\mathrm{N} の力を加え続けて 1 秒の時点」では、
「物体の右方向への速度が 1\mathrm{m}/\mathrm{s} 」になっています。
ついでに「 1\mathrm{N} の力を加え続けて 0.5 秒の時点」では、
「物体の右方向への速度は 0.5\mathrm{m}/\mathrm{s} 」です。
これでなんとなく分かったと思うんですけど、
こいつは1つの時点で見てもよく分かりません。
確認しておくと、厳密な定義だと、
これは『加速度を生じさせる力』なわけですが、
いまいちピンときません。
このままでは実感しにくいです。
しかしどうでしょう。
\begin{array}{llll} &\displaystyle 1\mathrm{N}& \\ \\ 1\mathrm{kg},0\mathrm{m/s} &→& 1\mathrm{kg},0\mathrm{m/s} &(t=0) \\ \\ 1\mathrm{kg},0\mathrm{m/s} &→& 1\mathrm{kg},0.5\mathrm{m/s} &(t=0.5) \\ \\ 1\mathrm{kg},0\mathrm{m/s} &→& 1\mathrm{kg},1\mathrm{m/s} &(t=1) \end{array}
↑のような感じに変換すると、
『速度を増加させている力』として
見た目で分かる形になってるので、
ちょっとは実感しやすくありませんか?
とまあこんな感じで、厳密な定義と一緒に、
「実感しやすい」よう、
『 1\mathrm{kg} の物体に』対して、
『速度を与える力』だと覚えておくと、
理解しやすいと思います。
こう覚えておけば、
見た目という分かりやすいもので簡単に説明できますし。
ジュール(\mathrm{J})
これは『エネルギーの単位』ですね。
物理学の中心的な単位になります。
基本的には「 1\mathrm{J}=1\mathrm{N}・1\mathrm{m} 」で覚えて、
『電力量』の「 1\mathrm{J}=1\mathrm{C}・1\mathrm{V} 」も覚えておけば、
他の話はだいたい網羅できます。
というのも、これは『移動に必要な力』という点で、
非常に理解しやすいエネルギーの定義だからです。
どういうことかというと、
『 1 つのものを、移動させる力』っていうのは、
例えば「 1\mathrm{J}=1\mathrm{N}・1\mathrm{m} 」なら↓みたいな意味になるので。
ある 1\mathrm{kg} の物体があって、
それに 1\mathrm{m}/\mathrm{s}^2 の加速度を与える力を、加え続ける。
その状態で 1\mathrm{m} 進める。
(全部掛けて 1 になれば 1\mathrm{J} )
これを『実現するために必要な力』か、
もしくは『実現されたときに消費された力』が、
「 1\mathrm{J} のエネルギー」になります。
ざっくりとはこんな感じですね。
『熱』や『電力』についての詳しい話は続きでしていきます。